映画監督、俳優らによる女性への性暴力が次々に告発されている。4月12日には作品が映画化されたことのある作家18人が連名で「原作者として、映画業界の性暴力・性加害の撲滅を求めます」という声明を発表。その文責、作家の柚木麻子さんは「この問題は出版業界にとっても地続き。ひとごとではない」という――。

作品が映画化された作家18人で声明文を発表

今回、この声明を出したのは、映画の世界で性暴力を受けたと告発した女性たちに賛同したいという強い気持ちがあるからです。(映画監督や俳優から性行為を強要されたという)被害女性たちの告発を受け、作家同士で主にオンライン上で相談し、それぞれの意見を採り入れ、数え切れないぐらい何度も声明文を作り直しました。

賛同した作家は他にもいるのですが、説得力を出すため、名前を出すのは原作者として映画化が決まっている人や、既に映画化された経験がある人に絞りました。これまで私たちは自分の小説が映像化されるとき、その制作プロセスにはほとんど絡まず、許可を出したら後は劇場公開前の試写で見るだけという感覚だったのですが、よく考えてみると、最初に契約書は交わしているわけなので、もし、その段階で何かを要求していれば、性加害やさまざまなハラスメントを防げたのではないか。みんなでそう話し合うようになりました。

映像化に条件をつければ性加害を抑止できるのでは

小説家は映画化の話をもらうと、うれしいもの。オファーが来たら私の周りでは基本的には受けるもので、よほどのことがない限り契約にも注文をつけません。後は台本をチェックするぐらいで、「良い映画ができたらいいな」と思っているぐらいの関わり方なんです。私も過去に小説が映画化されたとき、ほとんどノータッチでした。しかし、契約している以上、その現場で起きていることは私たちも関係がある。もしかしたら、私たちには抑止できる力があるのではないかと思いました。

また、映画業界の人に話を聞くと、もちろん性被害を無くしたいと思う人たちはいて、個人として声を発する勇気はあるものの、そこから連帯することがなかなか難しいそうなんです。というのは、制作会社や製作委員会という大きな船のようなプロジェクトに1人ずつ参加しているので、いくつかの組織をまたいで告発するのにはハードルがある。それなら、私たち作家の多くは個人事業主なので、こちらから声を上げられるのではと思いました。