「働かないおじさん」を生まないためにはどうすればいいのか。企業を成長させる組織論を展開する識学の安藤広大社長は「『働かないおじさん』を生み出さないためには、方法は1つ。それは『マイナス評価』を取り入れることです」という――。

※本稿は、安藤広大『数値化の鬼 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

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「働かないおじさん」を生まないための仕組みづくり

「働かないおじさん」を生まないためには、どうすればいいのでしょうか。

個人の責任にするのではなく、仕組みとして解決できることを考えていきましょう。

あなたなら、どのような制度を取り入れますか。ちょっと考えてみてください。

「インセンティブ制度を取り入れる」という答えが思い浮かんだかもしれません。

成果を出せば出すほど給料が上がるのであれば、全員やる気に満ち溢れるような気がします。しかし、インセンティブ制度は、非常に要注意な考えなのです。

「インセンティブ制度」の弊害

インセンティブ制度を丸ごと否定しているのではなく、注意して扱う必要があるという話です。インセンティブを取り入れると、社内で競争が生まれます。そのこと自体は、活性化につながるので短期的なメリットではあります。

しかし、長期的にデメリットが存在します。

インセンティブ制度があると、全員が目先のことだけを考えるようになり、気持ちは期ごとに区切られ、帰属意識が少なくなります。

まず、インセンティブ制度だと、トップの経営者だけで全員の評価を下せるようになります。社長、部長、一般社員という3つの階層があるとすると、真ん中に部長が存在する意味がなくなります。

この現象は、外資系の保険会社などに多く見られます。営業のプレーヤーが数字をガンガンあげて、トップの経営者がそれに応じた給料を支払います。すると、プレーヤーは経営者のことを見て仕事をするので、上司である部長との関係が機能しません。

こういうプレーヤーは、さらに稼げる環境があれば、すぐに転職をします。

組織全体に貢献するほうのインセンティブがまったく無いからです。

これは、芸能事務所を見てみればよいでしょう。

芸能事務所は、個人の集まりで、チームプレーがほとんどありません。そうすると、看板タレントが偉くなります。有名タレントが経営陣よりも発言権が強くなります。「気に入らないことがあればいつでも辞めるからね」という力関係が生まれてしまうのです。

こうなってしまうと、他の所属タレントにとってメリットもありません。

ということで、長期的に会社をよりよくしていきたいのなら、インセンティブ制度だけではうまくいかないのです。