年収1600万円→500万円「自分の価値はこの程度か…」
「マーケティング職での求人でしたが、実質的に営業でした。しかも提示された初年度の年収は500万円。前職の1600万円よりはるかに低く、せめて800万円はほしかったのですが、希望する年収はまったく無理ですし、自分の価値はこの程度かということを思い知りました。断ろうかと思いましたが、1年を過ぎると自分の市場価値がもっと下がるという恐怖感もあり、入社を決めました」
大手企業で高い年収と職場の肩書きをプライドにしてきた人にとって、前職の3分の1以下の年収で格下の中小企業に再就職するのはつらいだろう。しかしそれが現実だ。Aさんだけではない。中堅企業の取締役常務だった人が退任後、清掃会社に再就職し、ビルの清掃業務に従事している例もある。
また、広告代理店やテレビ、新聞などのメディアは総じて給与が高い。ベースの基本給が高いだけではなく、他の業界に比べて年功賃金体系が色濃く残っている企業も多い。その結果、前述した「強制貯蓄分」が反映され、50代で2000~3000万円の年収をもらっている人も少なくない。そんな人が年収500万円で再就職するとなると、普通の会社員に比べて、悲哀と落胆の度合いは一層深いだろう。
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。