「ただ眺めているだけ」では幸福度が低下する

ヴァーダイン准教授らはSNSの利用方法によって幸福度に及ぼす影響が変化することも明らかにしています。

特にSNSを「消極的に」活用する際、幸福度の低下が顕著であると指摘しています(*6)

ここでのSNSの「消極的な」活用とは、他の利用者との直接メッセージのやり取りを行わず、他の利用者の投稿等を閲覧するのみに使用する場合を指しています。

おそらく、「画面の中で輝く人」と自分の現状を比較してしまい、劣等感や嫉妬にさいなまれ、幸福度が低下してしまうためだと考えられます。

(*6)Krasnova, H., Widjaja, T., Buxmann, P., Wenninger, H., & Benbasat, I. (2015). Research note—Why following friends can hurt you: An Exploratory Investigation of the Effects of Envy on Social networking sites among college-age users. Information Systems Research, 26(3), 585–605.

幸福度を高めるSNSの利用方法

ヴァーダイン准教授らは、SNSの使い方によって幸福度が向上する場合もあると指摘しています。

それは、他の利用者との直接的なメッセージのやり取りや自らの情報更新、さまざまなリンクの共有といった形で「積極的に」SNSを活用する場合です(*7)

他の投稿者の更新情報を見る消極的な利用では幸福度にマイナスの影響をもたらしますが、SNSを積極的に活用し、他の利用者との交流を深める使い方であれば幸福度の向上に寄与するというわけです。

SNSを積極的に活用し、他者との交流をはかることは、疎外感や孤独感を低下させます。これが幸福度の向上に一役買っているというわけです。

(*7)Frison, E., & Eggermont, S. (2015). Toward an integrated and differential approach to the relationships between loneliness, different types of Facebook use , and adolescents’ depressed mood. Communication Research, 1–28.
Wenninger, H., Krasnova, H., & Buxmann, P. (2014). Activity matters: Investigating the influence of Facebook on life satisfaction of teenage users. In M. Avital, J. M. Leimeister, & U. Schultze (Eds.), Twenty Second European Conference on Information Systems (pp. 1–18). Tel Aviv, Israel: ECIS.

SNSは使い方次第で毒にも薬にもなる

これまで紹介した研究が示すように、SNSの過度な利用は幸福度を低下させてしまいます。しかし、自らの交友関係を維持・拡大するためにSNSを積極的に活用する場合だと、幸福度を高めてくれます。

このようにSNSは使い方次第で「毒にも薬にもなる存在」です。

SNSは利用者間の情報を簡単に共有・利用できる非常に便利な道具です。しかし、さまざまなものが「見えすぎてしまい」、それがストレスを生む原因にもなっていると考えられます。

この点を考えると、SNSを楽しく、自分の生活を充実させる道具として使っていくには、画面の中で輝く人と自分を比較するのではなく、知人・友人・家族との交流を深めることに特化させた方がいいのかもしれません。

SNSという便利な道具をうまく使っていきたいものです。

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。