頑張れない子かわがままな子をつくりだす

“微毒”親たちは、親としての教育力が弱い。子供に嫌われたくないのか、物わかりのいい親振りを見せたいのか、進路などの重要事項について「子供の自主性に任せています」という伝家の宝刀を振りかざしてくる。それでいて、子供の社会的なマナー違反や嘘、怠惰をきちんと叱っていないから、子供は堕落した生活をしていたり、自分を律せなかったりするようになる。不登校や引きこもりが始まる一要因と言って間違いはなかろう。一言でまとめれば、「頑張れない」子か「わがままな」子になっていくのである。

“猛毒”親の子たちは、自暴自棄になったり厭世観が強かったりするケースもあるが、親の毒を否定できる賢さを持っている場合もあり、「自分の人生を自分で作っていこう」「親は親、おまえさんはおまえさん。別の人格だよ」という助言や交流が成立する。

ところが、“微毒”親の子は親を否定しない。むしろ親に感謝していたりする。だから、親の意見・思想の傘の下から連れ出すことが難しい。先のアドバイスはもちろん、「今のままじゃ、目標実現できないぞ」とか「クラスのみんなのことも考えようよ」と促しても響かない。「受験は団体戦の要素があるぜ」と言っても駄目。最終的に、自己の利益だけを緩く追求し、結果が出ないパターンが多かったように思う。

※1 斎藤学「毒親と子どもたち」(日立財団webマガジン)(2022/1/15閲覧)
※2 令和2年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数(2022/1/15閲覧)
※3 厚生労働省「福祉行政報告」(2019)(2022/1/15閲覧)
※4 同上と「平成29年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数〈速報値〉」を相関させて書いた。
※5 厚生労働省 児童相談所関連データ(2022/1/15閲覧)
※6 川松亮明星大学常勤教授の計算方法を参考に筆者が計算した。
児童相談所における虐待対応の現状と課題」(2020)(2022/1/15閲覧)
※7 友田明美「体罰や言葉での虐待が脳の発達に与える影響」(2022/1/15閲覧)

林 純次(はやし じゅんじ)
教育スーパーバイザー

1975年埼玉県生まれ。京都大学大学院教育学研究科修了。大学卒業後、大手新聞社に記者として入社。事件・事故、医療、政治、教育、高校野球などを担当する。フリーランスジャーナリストに転身した後は、カンボジアやパレスチナなどの貧困地帯や紛争地域を取材。教育者に転身し、国語教育や平和教育に勤しむ。2012年度読売教育賞優秀賞(国語教育部門)受賞。IB(国際バカロレア)校での教頭職や教員研修の講師を経て、現在は関西の私学で教鞭を執る傍ら、国内外の中等教育学校のスーパーバイザーや、教師向けのインストラクターを務めている。著書に『残念な教員』『本物の教育』〈共著〉(いずれも光文社新書)がある。