毒親の元で育つ子供たちは、どうすればそこから抜け出せるのか。国内外の中等・高校でスーパーバイザーを務める林純次さんは「高校生くらいの年代になると“猛毒親”よりも、“微毒親”の方が厄介な面も多かった」という――。

※本稿は、林純次『学校では学力が伸びない本当の理由』(光文社新書)を一部再編集したものです。

家庭内暴力。怒った母親がおびえる娘を叱る
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幼少期の生育環境の影響は大きい

責任転嫁だと指摘されようと、ゲノムの次に重い要素は幼少期の生育環境だと喝破したい。

私が青臭い教員だった頃、親が無責任で全く家庭教育がなされていない子でも「俺の力で賢くしてやる」と息巻いていたことがあった。確かに生徒の偏差値を20~30ポイント向上させたり、授業アンケートで好成績を残したり、在籍者全員が第一志望に合格できたこともあった。その過程で、彼らは自律すること、疲労や不安と向き合いそれを乗り越える力を身に付けていった。

同時に、毒親としか表現できない親を持つ子で、どうにも交流や改善ができない者もいるという現実を知っていった。その子たちは短期的に、あるいは中期的に頑張り続けられない。すぐに弱音を吐く。健康状態や精神状態が不安定、時として自傷他害行為をするという傾向が見て取れた。

毒親の4分類

精神科医である斎藤学は、毒親を4分類している。

①過干渉、統制タイプ:何でも先回りし、子どもに「こうすべき」と指示する親、②無視タイプ:ワーカホリズム(仕事依存)の親。ネグレクトも含む、③ケダモノのようなタイプ:暴言・暴力といった虐待、性的虐待などをする親、④病気の親:精神障害や反社会性人格を持つ親、である(※1)

このような親が事件を起こしたニュースを聞きながら、「なんで子供を産んだんだ」「責任持って育てろよ」「(子供が)かわいそう」とテレビの前で言うのは容易(たやすい)。我々教職の人間は、その被害者たる児童・生徒の気持ちを少しでも落ち着かせ、我々の考える健全な状態に近づけようと奮闘しなくてはならない。多くのパターンで、被害者である児童・生徒本人に嫌われながら。

というのも、子供は親が好きなので、虐待する親でも親の味方をするからだ。前記のレベルの“猛”毒となると、教育者だけでは対応が困難で、医療関係者や福祉関係者、時として司法関係者の力も必要になる。

これだけ多くの大人が関わって生活改善に勤しんでいる最中に、勉強をしろ、などとは言えないし、言ったとしても無駄だろう。

家庭背景に課題のある生徒の数は偏差値に反比例する

公立の小中学校には、このような家庭背景を抱えながら登校してくる子供が一定数いるものだ。高校くらいになると比率こそ減るが、それでも何人かは確実に在籍していると我々は身構えているし、悲しいかな、偏差値に反比例してその数は増えるように思われる。

特に③に分類されるだろう暴言を吐く親は少なくなかった。「何かというと怒鳴られる」とか「酔った父親がむちゃくちゃなことをまくし立てる」とはよく聞いた相談だ。実際に児童相談所に寄せられる相談の過半数が心理的虐待だとのデータもある(※2)

私の教師生活も「なんで子供を産んだんだ! 育てる気はないんか!!」という怒りを胸に仕舞い込み、そういう親と対峙する日々だったように思う。