資格の有無はこだわらなくていい

医者は資格がないとできませんが、カウンセラーは資格がなくてもなることができます。確かに玉石混交ではありますが、必ずしも資格がないから良くないというわけではありません。カウンセリングは相性が重要なので、資格がないカウンセラーであっても自分と相性がよければよいと思います。

ただ、そのときに注意してほしいのが値段です。カウンセリングは自由診療なので、保険がきかず、精神科の診療に比べて高くなる傾向があり、法外な値段をとるところもあるので、気を付けた方がいいでしょう。病院のカウンセリングを受けると、だいたいの値段の相場や、スタンダードなカウンセリング方法がわかるので、順番としては最初にそちらを利用してみてください。

どんな医者が「いい医者」なのか

「いい医者とはどんな医者でしょうか」とよく聞かれます。しかし、この質問に答えるのはすごく難しいです。もちろん、病気を治してくれる医者がいい医者ではありますが、いくらいい薬を出してくれても、相性が悪くてダメだという人もいますし、反対に、治療の力がそれほど高くないのに人気の医者もいます。

特に精神科医は、病気だけではなくその人の人生を診るといった面があるので、患者と並走してくれる医者が「いい医者」ということになるのかもしれません。そこが内科や外科とは違うところです。

2021年末、大阪の放火事件で亡くなった精神科医の先生は、産業医でもあり、働く人の支援に力を入れていらっしゃいました。休職中の人や、休職から復帰した人たちを励まし、並走していた先生だったからこそ、亡くなって多くの人から惜しまれているのだと思います。

構成=池田 純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。