お金持ちは人に感謝しない
お金持ちは人に感謝することがない。それは、お金持ちが自分勝手で人に感謝しないという意味ではない。お金持ちが他人に報いる場合には、「感謝」ではなく「お礼」をするのだ。
お金持ちが「感謝」するのは、「天賦の才能」「健康な体」「成功をもたらした環境」などに対して。直接的にお礼をすることができないものには、感謝の心を表すのである。
資産家でかつては政治家だったこともある糸山英太郎氏(会社の乗っ取りでも有名)は、昔ある証券マンからインターネットによる株取引のやり方を教えてもらった。その証券マンの会社では、まだネット取引のサービスは始まっていなかった。しかし、彼は勉強と情報収集のために他社に口座を開き、学んでいたのだ。糸山氏はネットの大きな可能性を即座に感じ取り、その後の事業活動に生かしたという。
しかし、糸山氏はその証券マンに「感謝」しなかった。その代わりに「お礼」をしたのである。数億円の取引をポンと発注したのだ。彼が伝説的なトップ営業マンになったのは言うまでもない。
「お礼」とは身銭を切ること
「お礼」をするということは、身銭を切るということだ。そのため、本当に貢献してくれた人にしかできるものではない。
ただ「お礼」はおろか、「感謝」の言葉さえ他人にかけることができない人が多いため、「感謝」されただけで舞い上がって喜んでしまう人がたくさんいるのも事実。こうして「感謝するのはタダ」という格言が生まれることになる。
したがって、お金持ちから「感謝」の言葉をかけられたら、半分は冷静に受け止めるべきだ。「感謝」されたのか「お礼」をされたのかの違いは大きい。自分は他人からお礼されるだけのことをしているのか、常に考えたほうがよい。
1969年宮城県生まれ。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村証券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。その後独立。中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。