男性と同等に稼げていれば、老後に関しても男性と同じレベルの備えでよいと考えている女性は多いのではないでしょうか。しかし日本の平均寿命から考えれば、女性の老後は男性よりも長いものです。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘さんは「女性のほうが長生きするうえに、年金は少なくなりがちです。老後のために真剣に備える必要があります」と警鐘を鳴らします――。
銀行の通帳を見てびっくりした高齢者
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独身でも既婚でも女性の老後生活は厳しい

男性はもちろん女性も、ご自分の老後の生活のことを、心配している方が多いと思います。しかし、具体的に、どんな備えをしているのでしょうか。

じつは、女性の老後生活は、真剣に備えておかないと、かなり厳しい状態になるということです。最初から脅すようなことを言って申し訳ないのですが、これは事実です。

なぜ、女性の老後生活が厳しくなるのかを簡単に説明すると、次のようなストーリーになります。

女性は、男性に比べて平均的に給与が低いというデータがあります。給与が平均以上の場合でも、出産・子育てなどで休職期間などがあるケースでは、働いている期間が短いのが一般的です。その場合、結果的に、厚生年金の受給額が少なくなりやすいのです。

夫婦での老後生活は、夫の年金との合算になるので生活費はなんとか確保できます。しかし、夫が死亡すると、遺族厚生年金があるとはいっても、年金の受給額は半分以下になります。一人暮らしの期間が長くなり、認知症のリスクも出るので、介護費用がかかります。

一方、独身の場合でも課題はあります。老後生活は夫の年金がないため、一人分になるのは当然ですが、なおかつ長生きの場合、血縁者が少ないため、要介護になる前から介護付き施設を選ぶ可能性も高まります。そうすると、日々の支出は割高になり、寿命とお財布との戦いになることもあります。

いずれにせよ、女性の老後生活は、経済的に厳しいと言わざるをえません。

年金が少なく、長生きをするので、ダブルで不利?

まず、女性の年金額は、一般的に低いということを説明しておく必要があります。

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和元年)」を見ると、厚生年金の平均月額受給額は、男性:17万1305円、女性:10万8813円です(2020年のデータはコロナ禍で影響があるので、2019年のデータを使用しました)。厚生年金の受給額を見るとなんと7万円近い差になっています。

なぜかというと、女性の方は平均賃金が低く、就労期間も短くなってしまうことが大きな要因でしょう。これだけでも、女性の場合は不利ですが、さらに男性より長生きをする確率が高いので、ダブルで不利になります。