アメリカが中国に勝てる見込みはなし

地政学ではユーラシア大陸にある大陸国家を「ランドパワー」、国境の多くを海に囲まれた海洋国家を「シーパワー」ととらえ、歴史上は大きな力を持ったランドパワーの国がさらなるパワーを求めて海洋に進出して、シーパワーの国と衝突するといったことを繰り返しています。

現在、ランドパワーを持った中国が海に出て行き、シーパワーの台湾とぶつかっている状況です。これが成功するかどうかは誰にも予想できませんが、台湾自身も力を持っていますし、そこには日本、韓国、アメリカもいる。中国がかつてのアメリカのように易々やすやすと世界に展開していける状況は、まだ厳しいのかなというのが私の見立てです。

問題は台湾有事があるのかどうかです。東海岸のロードアイランド州には、アメリカ海軍と関わりの深い、海軍大学があります。そこでは台湾有事が起こったらどうなるのか、ウォー・ゲーミング(war gaming=図上演習)を行って、シナリオを描き出しています。今はアメリカよりも中国のほうが船の数だけでも圧倒的に多く、それらの船がしっかり動いたらどうなるかシミュレーションをしてみると、残念ながら今のところアメリカが中国に勝てる見込みはない。去年までに行ったウォー・ゲーミングでは、20回中アメリカ軍が全敗という結果も出ています。この結果は、アメリカ海軍が国に予算を求める口実としている部分もありますが、アメリカと中国の力が拮抗きっこうしているのは間違いありません。

SF的な近未来都市の兵士
写真=iStock.com/gremlin
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実際、中国が台湾に軍事的に侵攻する事態が起こったら、日本もひとごとではありません。もし中国が侵攻するとしたら、最短距離である台湾海峡を渡って直接侵攻することは考えにくい。軍のプランナーが考えるのは、北側から回って反対側から入ってくるルート。つまり尖閣諸島、石垣島や宮古島のほうを通ってくることになります。そうすると、中国はこれらの島々が邪魔になるので、米軍や自衛隊の動きを封じ込めるなど、何らかの働きかけを行うであろうと言われています。実際、回り込んで入ってくると必ず島々は巻き込まれます。イヤな話ですが、沖縄の一部は戦場にならざるを得ない。それらを踏まえると、やはり台湾有事に関しては、日本は巻き込まれる覚悟でいるべきだと思います。