社会学者で東京大学名誉教授の上野千鶴子さんは「女の子だって人生の主役なのに、女の子がどうやって人生の主役として生きるかを書いた本は、たくさんはない」として、若い女の子に向けた本を書きました。そして「女の子の意欲をくじかないで」と説きます――。

※本稿は、上野千鶴子『女の子はどう生きるか』(岩波ジュニア新書)の一部を再編集したものです。

東京大学
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女子だって東大を目指す!

【Q】浪人して、東大を目指している姉にむかって、祖母は「もうお嫁にいけない」と愚痴をこぼします。男の子だったら言わない気がします。どうして女の子が東大を目指したり、浪人したりしてはだめなのですか?

【A】ふーむ、そうなんですねえ、女子も大学へ行ったほうがよいけれど、トップ大学の東京大学は避けた方がよい、なぜなら「お嫁にいけない」からって?

女子の四大進学率は50.1%に増えました。なのに、東大だけはずぅーっと女子学生比率が2割を越しません。へんでしょ? あなたの祖母のようなひとがいて、女の子は東大に行かない方がいいって、クソバイス(クソのようなアドバイス)をするからです。

でも、いまお姉ちゃんは浪人して東大を目指してるんでしょう? ということは、あなたのご両親は、お姉ちゃんが浪人することをサポートしてくれたんですね。東大を目指せる成績なら、ランクを落とせばそこそこの大学に入れるのに、「くやし~、再挑戦したい!」というお姉ちゃんの気持ちを、ご両親は汲んでくれたんですね。予備校だってお金がかかる、それに社会人になるのが一年遅れる、履歴書に浪人経験を書いたら就職に不利かもしれない……というハンデを押して、「がんばってみれば!」ってお姉ちゃんに言ってあげたご両親はごりっぱ。おばあちゃんとは意見が違います。そう、祖母、母、娘の時代は確実に変わってきました。

とはいえ、おばあちゃんの言うことにも一理あります。兄と比べて妹も成績がよいけれど、お兄ちゃんを上回らないほうがよい、とか、成績のよい女の子が「バカなふり」をするとか、聞いたことがありますか?

東大には東大男子と他大女子だけが入れて、東大女子が入れないインカレ(インターカレッジ、つまり大学の垣根を越えた)のテニサー(テニスサークル)がいくつもあります。わたしが学生だった半世紀まえにもありましたが、今でも続いていると知ってびっくりしました。相手にする大学は、東女(東京女子大学)や聖心(聖心女子大学)のような女子大が多いようです。つまり世間一般の平均よりはちょっと上を行っていてほしいけれど、ボクを凌駕しないでくれ、って、下心が見え見えですね(笑)。