週2回しか買えない「限定感」

こうしたニーズを背景にして、外出自粛期間中にいちばんはやったのが「Mr. CHEESECAKE」です。Z世代にとっては少し高価な、3000円以上もするチーズケーキですが、高校生から大学生までたくさんの若者が購入に走りました。

期間限定のフレーバー「Mr. CHEESECAKE marron」
期間限定のフレーバー「Mr. CHEESECAKE marron」(写真提供=Mr. CHEESECAKE)

このケーキは週2回しか買えないという限定販売品。はやった要因としてはもちろんおいしさもあると思いますが、すぐには手に入らない「限定感=プレミアム感」が若者の購買意欲を刺激したのはではないでしょうか。

似た例に、モスバーガーが3月に発売した「モス食パン」があります。予約限定で、しかも毎月第2・第4金曜日にしか買うことができません。こちらも、欲しいと思ってもすぐには手に入らないというプレミアム感があり、若者の間で大きな話題になりました(現在は販売休止)。

待たされることを楽しむZ世代

僕たちの世代では、商品やサービスにおいて待たされることはマイナスだと捉える人が多いと思います。でもZ世代は、待たされること、お預けされることにワクワク感や特別感を覚えている様子。

彼らは「待てる子たち」であり「待たされることを楽しむ子たち」なのです。ここには大きなジェネレーションギャップがあります。

従来のビジネスでは、顧客を待たせることなくできる限り早く提供するのがよいと考えられてきました。それがよい商品であり、よいサービスだとされてきたのです。もちろん、そうした点は今も重要ではありますが、若者向けの商品に限っては通用しない場合もあります。

インスタ映えや動画映えを前提に、商品に対して人との差別化や他とは違う特別感を求めるZ世代。ここにコロナ禍による退屈時間の増加が加わり、新たなチャレンジ欲求やお預けニーズを生み出しました。

大人は「早く手に入るほうがいいに違いない」と思い込みがちですが、実は若者たちの間には真逆のニーズもあるのです。企業のマーケティング担当者や開発担当者には、こうした新たなトレンドが生まれていることを、ぜひ知っておいていただきたいと思います。

構成=辻村洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)などがある。