圧着ハガキを開けないまま捨てる人も
具体的にはiDeCoに加入していれば毎年10月末頃に国民年金基金連合会から自宅に「小規模企業共済等掛金控除証明書」が圧着ハガキで届きます(画像参照)。そこに記載されている金額を年末調整の書類に記入し、送られて来た証明書を添えて提出をすれば良いのです。
ところがこのハガキ、中を見ないままに捨ててしまっているという人も実際にいます。iDeCoに加入していることは認識していてもそれを年末調整の際に出すのを忘れてしまうと、これだけの税金の戻りを受け取ることができなくなってしまいます。
仮に30歳でiDeCoに加入し、上記の条件で60歳まで積立を続けた場合、積立額の累計は720万円となりますが、税金が戻ってくる分は何と144万円にもなります。iDeCoの税メリットの中で最も大きな所得控除を気付かずに、あるいは忘れてしまっているというのは実にもったいないことです。
忘れた人は翌年の確定申告でも間に合う
ただし、仮にこれを提出しなかったために年末調整で還付されなくても、そのことに気が付けば翌年の確定申告で申告することで還付は受けられます。また、これを提出しなくても年末調整で自動的に会社が処理してくれる場合もあります。それはiDeCoの掛金を会社が給与から天引きしてくれている場合です。しかしながらiDeCoというのは個人が自分の老後資産形成のためにおこなうものですから、基本、会社はあまり関係ありません。最近では個人の出す掛金に会社が掛金を上乗せするiDeCoプラスという制度も広がりつつあります。この場合であれば給与天引きしてくれますが、まだそういうケースは少ないのが現状です。したがって、やはり自分のところに送られて来た「小規模企業共済等掛金控除証明書」はきちんと取っておき、年末調整で用紙が配られた時には一緒に提出することを忘れないようにすることが重要です。
最近では年末調整で提出する書類のひとつである「保険料控除申告書」にも「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」という項目が作られています。ただし、iDeCoに加入し、最初の引き落としが10月となった場合は、書類が送られてくるのがその少し後になりますので、年末調整で提出するには間に合いません。その場合、翌年に確定申告をすればいいでしょう。
税や社会保険についてはよくわからないからと放っておくと受け取れるはずのお金がもらえなくなることもありますので、年末調整といえども会社に任せきりにするのではなく、ちゃんと理解をしておいた方がいいですね。
大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。