難民問題解決には、強いリーダーの存在が不可欠

難民問題を解決するには、それぞれの国が自立して、うまくやっていくのが理想ですが、現実的にはうまくいかないことのほうが圧倒的に多いでしょう。

たとえば、西洋側が「うまくやってくれ」と介入しようとすると、現地の人たちは「また植民地支配をしようとするのか」と反発します。「じゃあ抜けますよ」といって抜けると、内部抗争を始めて難民がわっと出てくる。そこで「君たち、やめなさい」とまた西洋側が入っていくと「また植民地支配するのか」と……。学級崩壊と同じですね。学級崩壊しているクラスに新しく先生が入ってきても、そもそもその先生が偉いのかとなって、やっぱりまとまらない。

難民問題はなかなか難しいですが、必要なのは、やはり国をがっちりまとめられる強力なリーダーの存在でしょう。

それでいくと意外な成功例が、シンガポールと北朝鮮です。シンガポールは実は報道の自由がなくて、「明るい北朝鮮」といわれている国。ビジネスはオープンにやっていいけれど、政治は絶対に触らせない。シンガポールがうまくいっている要因は、そういった強権的なところですが、それが変な方向にいくと北朝鮮になってしまうということです。アジアでも、こういう実例があるわけです。

極東の国は何となく行きづらい……

日本が幸か不幸か難民問題に悩まされずにすむのは、やはり地理的な影響が大きいでしょう。ヨーロッパにしろ、アメリカにしろ、地続きであれば、どこかの国が受け入れざるを得ませんが、日本は海を渡らなければたどり着けない国ですから。

地球儀の日本、韓国、中国
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日本はそのように紛争地から地理的に離れているうえ、紛争地そのものにそれほど関与しているわけではないことも、難民を受け入れずともなんとなく許されている理由になっています。

たとえばイギリスは、インドやパキスタンなどに対しては植民地の歴史がありますから、そういった国の人たちを受け入れざるを得ない。アフガニスタン難民にしても、そもそも日本は関与しているわけではなく、最終的にヨーロッパが受け入れることで、日本は受け入れなくてもいい状況になっているのです。

ただ日本も世界の状況に甘えてばかりいるわけにはいきません。現実に国際社会からは、難民を受け入れる条件が厳しすぎるといった批判もあります。

この夏、日本政府は、東京オリンピックに出場したミャンマーのサッカー選手を政治難民として受け入れましたが、それでも他国に比べると数が圧倒的に少ない。

今後、難民問題は日本にとっても逃れることのできない課題になってくるでしょう。

奥山 真司(おくやま・まさし)
地政学・戦略学者

戦略学Ph.D.(Strategic Studies)国際地政学研究所上席研究員。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士に師事。近著に『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(新星出版社)がある。