アメリカ軍がアフガニスタンから撤退してから約2カ月。今、中東やヨーロッパにはタリバンから逃れる難民であふれかえっている。全世界で約8000万人、人口の約1%を占める難民の現状や原因、日本の立ち位置などを、地政学者の奥山真司氏が語った――。
人々の影
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アフガン難民にパキスタンやイランは大迷惑

アメリカ軍がアフガニスタンから撤退したことで今、周辺にはとんでもない数の難民があふれています。たとえばパキスタンに流れている難民の数は、約150万人。神戸市や川崎市と同じ人数です。そしてイランには、高知県や山梨県の人口と同じ約80万人が流入しています。

さらにイランの先にあるトルコは、難民が必ず行きたがるヨーロッパへのゲートウエイですが、ここはすでに2015年ごろから発生しているシリア難民400万人を受け入れています。400万人というとなんと横浜市と同じぐらいです。

こうした難民問題に対して、各国の対応はさまざまです。EUは、とりあえず「人道的に受け入れなくてはいけない」と言いつつ、具体的にどうするかというと「まずは周辺国でなんとかおさめていただく」という。

周辺国というと、先述したパキスタンやイラン。これらの国は、実は「絶対に入れない」と言っていますが、現実的には入ってきてしまうので、受け入れざるを得ない。

イギリスやカナダは、表向きには「受け入れますよ」と言っていますが、イギリスは本音ではまったく入れたくない。カナダも入って来ては困ると思っているけれども、多民族主義だからと、ある程度は受け入れる方向が予想されます。

2015年11月19日、スロベニア―オーストリア国境の難民
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アメリカは当然、自分たちが関与していたので、協力してくれた家族などは受け入れようとするでしょう。しかしトランプ政権時代から増えてきた、本音トークをする共和党の支持者から「イスラム系はイヤだ」という声が出てくる可能性もあります。

中国は「安定してほしい」と言いながら、「ウイグルのほうに強制収容所があるからな」とにおわせることで、ひとつの抑止力になっています。

とにかくアフガニスタンの難民問題は、これからさらにフォーカスされていくでしょうね。現状は、周辺国がとんでもない負担を背負っているわけです。

各国が難民受け入れに難色を示す原因とは

こうした各国の動きからもわかるように、どこの国も基本的には難民を受け入れたくない。なぜかというと、生活習慣の違う難民が増えると、治安の問題もありますし、差別問題が移民元からそのまま移植される危険性もあるからです。

たとえば、ドイツでは「ユダヤ人差別はしない」ことが法律で決められているにも関わらず、ドイツに入ってきたイスラム系の人たちが、大っぴらにユダヤ批判をすることが現実的にあります。

そういった移民元から起こる社会問題は負の一面ではありますが、一方で難民がその国の経済を下支えしているという面もあり、結果的にそう悪いものではないというのが、今のところの研究者たちの一様の見解です。