「日本経済は今後衰退するだろうから、日本円だけしか持っていないのはリスクが大きい」そう考える人は少なくありません。しかし経済コラムニストの大江英樹さんは「外貨そのものを持つことに何の意味もありません。多くの人は外貨を持つことと外国資産を持つことの意味を混同しているのです」と指摘します――。
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外貨保有に関する大誤解2つ

投資についての話題のひとつに「資産分散の方法として外貨を持っておくべきだ」という話があります。多くの人はそう言われると「なるほど、そうかもしれない」と考えがちですが、これについてはもう少し深く考える必要があります。

どうもこの考え方の根底には、外貨を保有することについて次の2つの誤解があるとしか思えないからです。

①外貨を持つことと外国資産を持つことの意味の混同
②外国為替に投資することで利益が得られると思う勘違い

日本円しか持たないのはリスクなのか

私は外国資産を持つことは意味があるし、必要なことだと思いますが、外貨そのものを持つことには全く何の意味もないと思っています。なぜなら我々は日本に住んで生活しています。当然日常の生活で使う通貨は「円」です。いくら外貨をたくさん持っていてもそのまま使うことはできませんので両替するしかありません。頻繁に海外に行くとか、海外に家族が暮らしていて定期的に送金が必要という人でもない限り、外貨そのものを持っていてもそれだけでは使いようがないのです。

こう言うと、「いや、これからの日本経済は恐らく衰退するだろうから日本円だけしか持っていないというのは大きなリスクだ」という意見が戻ってきます。もっと極端になると「日本経済が破綻して円が紙切れになってしまうかもしれないということを想定して一定のドルを持つべきだ」という人もいます。でも本当にそうなのでしょうか?