3.多くの仕事が、デジタル情報のまま実行・完結
ペーパーレスという言葉が使われるようになって随分経ちますが、実際のところ進んでいる会社もあれば、いまだ紙仕事が中心の会社もあるようです。
そもそも紙仕事が悪というわけではないのですが、今回のコロナ禍で明らかになったように、仕事に紙を介在させることで、どうしても物理的な制約から逃れられなくなるといった側面はあります。たとえばハンコを押すためだけに、わざわざ密な満員電車に揺られて会社に行くのってどうなの? といったことが議論になっていましたよね。
さすがにこの有事で行政手続きなど多少は“脱ハンコ“が進みましたが、考えてみればこれまでもアメリカなどはサイン社会であった一方で、なぜ日本だけがハンコの慣習が温存されてきたのか不思議なくらいです。それがコロッと変わり、特に問題が起きている様子もありません。
逆に言えば、今もわれわれは何かを思い込んでいる可能性があり、ちょっとした出来事で、コロッと変わる可能性を秘めているのです。
今後ますますデジタル化が進むことで、仕事をデジタルの状態で受けて実行・完結できる機会も増えてくることでしょう。また同時に、紙や文具・什器に頼らなくなることで、間接時間や間接コストが自然と減っていくことに気づくはずです。物理的なものはデジタルなものと違い、運搬や廃棄に時間とコストがかかるのです。
4.デジタル化で、仕事の比重や質は大きく変わる
DXのような言葉ばかりが先行し、結局デジタル化で、個人や会社にとって具体的に何が変わるのか、どんな良いことがあるのか、といったことが、一般的にきちんと伝わっていないような気がします。
それについては、デジタル化の恩恵をどのレベルで見るかにもよるのですが、特に仕事やタスクのレベルで見た場合には、時間的な内訳が大きく変わってきます。
具体的には、知的労働のプロセスはおおむね「探す」「考える」「作る」「伝える」の4つで構成されていますが、それぞれの段階でデジタル化の恩恵を受けることになります。
たとえば「探す」は検索ツールを使うことで、「作る」はテンプレートや共有資料を活用することで、圧倒的に短くすることができます。そのおかげで浮いた時間を新たな挑戦に回せるようになります。
また探す、作る意外のプロセスには十分に時間をかけられるようになります。たとえば「考える」ことに時間をかけると、自分の理解や洞察が促進されます。「伝える」ことに時間をかけると、他人への共有や共感が促進され、そのおかげで仕事の質や他人からの評価は向上します。
デジタル化は、単にアナログ情報をデジタル情報に変換したり、デジタルツールを使うことだと誤解されがちですが、その本質はあくまで知的労働の4プロセスそれぞれへの恩恵でもって、仕事全体に好循環をもたらすことだと心に留めておきましょう。
外資系コンサルティング会社を経て謎解き企画会社『クロネコキューブ』を設立。700にもおよぶパソコン時短ワザを集めてマニュアル化している。著書に『爆速パソコン仕事術』(ソシム)『結果もスピードも手に入る 神速スマホ仕事術』(すばる舎)『やりたいことを全部やれる人の仕事術』(PHP研究所)『やめるだけで成果が上がる仕事のムダとり図鑑』(かんき出版)『ビジネスマナーと仕事の基本 ゆる図鑑』(監修)(宝島社)ほか。