少子化の進行が女性の幸福度を高めた可能性
以上の分析結果を基にすると、以下のような推論が成り立ちます。
まず、2000年以降も女性の社会進出が進み、女性が仕事の面で活躍する機会が増えてきましましたが、これが必ずしも女性の幸福度の向上に役立っていない可能性があります。
また、2000年以降、出生数は緩やかに低下しているため、子どもを持つ女性の数が減少していると考えられます。これが女性の幸福度の向上に寄与している可能性があるわけです。
実は日本では、子どもを持つ女性の幸福度が低くなる傾向があります(前回の記事「『子どものいる女性のほうが、幸福度が低い』少子化が加速するシンプルな理由」もご参照ください)。
このため、少子化の進行が女性の幸福度を押し上げた可能性があります。これはショッキングですが、ありうるシナリオではないでしょうか。ただこれはあくまでも「推論」です。この点はデータを用いてさらに検証すべき論点でしょう。
2010年以降の研究が待たれる
これまでの研究結果が明らかにしたように、少なくとも2000年から2010年までの間、日本の女性の幸福度は緩やかに上昇しています。この動きは望ましいものです。
しかし、2010年以降に女性の幸福度がどのように推移したのかという点はまだ研究がなく、明らかになっていません。2010年以降、東日本大震災やコロナ禍といった日本全体に大きな影響を及ぼした出来事もあり、女性の幸福度にも変化がみられると予想されます。
これらの点を考慮したうえで、改めて「日本の女性は幸せになっているのか」という点を分析していく必要があるでしょう。
1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。