家庭によって明暗が分かれるリモートワーク
――子どもがいる女性にとってリモートワークは助かりますよね。
【朱野】家事を主体的にする配偶者がいる家庭では、リモートワークによってほぼほぼワンオペ育児の問題が解決してしまい、楽になったと聞きます。保育園の送り迎えも分担でき、夜ご飯も家族全員で食卓を囲める。その一方、もともと家事をしない配偶者はリモートになってもしないので、さらなるストレスになったという人も……。わが家の場合は、夫婦どちらも家事をするんですが、食洗機にどう食器を入れるべきかみたいな“家事観の違い”でぶつかってしまって、板挟みになる子どもたちには「どちらかが交互にいない時間を作るべき」と言われています(笑)。
――結衣と晃太郎がリモートワーク時代に結婚生活を送ったら、どういう状態になりますか?
【朱野】晃太郎はともかく、結衣はストレスかもしれません。定時で仕事を終えて、ビールを飲みたいなと思っても、晃太郎はパソコンに向かって仕事しているとか、オンライン会議の声がずっと聞こえるとか……。
晃太郎のワーカホリックが加速しているのが心配でもありZOOM飲みで賤ヶ岳さんに「ずーっと家にいるんですよ」って愚痴っていそう(笑)。
もう1作書きたい
――Twitterで『わたし、定時で帰ります。』はもう1作書きたいとおっしゃっていましたが、次はどんな内容になりますか?
【朱野】やりたいなと思いつつ、次に考えているのが難しいテーマなので……。「ライジング」も初めは給料をテーマにするつもりはなく、今回はスピンオフとして全員の休日でも描くかと思っていました。給料の問題や労使交渉をやるなら今しかないとトライしてみたんですが、かなり難しかった。私の会社員としての経験は10年以上前で止まっているので、現役ではない私が今の会社の問題にどう解決法を考えるかというのは、毎回すごいプレッシャーです。だから、これからいろいろ取材をしてみて、解決法が思いついたら書かせていただきたいですね。
構成=小田慶子
1979年東京都生まれ。会社員生活を経て2009年、『マタタビ潔子の猫魂』で第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞しデビュー。2015年、『海に降る』がWOWOWでドラマ化される。2018年に刊行した『わたし、定時で帰ります。』は働き方改革が叫ばれる時代を象徴する作品として注目を集める。