教育、行政にも「ほころび」、変化へのひと手間が新規事業の種に

また、教育の領域にも「既得秩序のほころび」が生じた。2020年度から新しい学習指導要領による小学校でのプログラミング教育などが始まっているが、学校現場自体のICT(情報通信技術)化は、まだまだ進んでいない。休校期間中には、オンライン授業への進化が求められた。デバイスの不足やWi-Fiの未整備など学校において問題視されてきたことに目をそらさず、向き合うタイミングが訪れたのだ。世間的には「オンライン授業」を求める流れとなったが、オンラインで教育がおこなわれる体制が学校には整っていなかった。

Eラーニングオンライン教育
写真=iStock.com/Bet_Noire
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ただし、学校の問題だけをクリアすれば教育の課題を解決できるというわけではない。多くの家庭でオンライン授業を受け入れる環境整備が不足している。もし家庭に子どもが3人いれば、パソコンやタブレットを3台用意しなければいけない。デバイスが用意できたとしても、近くで接続すれば音声が混ざり合い授業どころではなくなってしまう。解決するには、別々の部屋を用意して授業を受けることだが、保護者も在宅勤務をしているような状況の場合、一体自宅に何部屋あれば足りるのだろう……と途方に暮れる状況になる。日本の住宅事情では、このような条件をクリアすることはほぼ不可能だろう。

また、学齢が小さい子どもほど、みんなで泣いたり騒いだりして遊ぶ中から学んでいく。オンラインの教育では、そうした体験を積むことが難しい。リアルな体験を積めないことが子どもたちにどのような影響を及ぼすか、未知数な部分は多い。だから単にオンライン教育にすればよいという、そう単純な話ではない。

そこで、さらにひと手間加えた新たな教育のカタチが求められるようになる。しかし、これまで変わることがなかった既得秩序に確実にほころびが生じていることは事実だ。そのほころびの中には、新規事業の種がある。読者のみなさんには、そこを商機と是非とらえていただきたい。

もうひとつの「既得秩序のほころび」が生じたのが行政だ。中でも、保健行政は今回の新型コロナウイルス感染症蔓延への対応で非常に苦労したところだろう。アナログではとても対応できず、IT化により効率的に迅速な対応が強く求められているはずだ。

日本には、1700あまりの地方自治体がある。それぞれの組織が計画を立て、予算取りから執行までのステップはみんなバラバラ。外側から見ると、何がどこで動いているのかが非常に見えにくい。

もしこれにITで横串が通されれば、てんでバラバラに動いていた地方自治体に共通言語が生まれていくだろう。これまで連携できていなかった民間との橋渡しにもなるはずだ。いわゆる、「to G(Government)」という領域の拡大が期待できる。ITが導入されることで、参入の可能性をさらに広げ、行政サービスも一層効果的なものにしていくことができる。

せっかくマイナンバーが導入されているのだから、そこに必要な情報を集約すればいいと僕は思っている。納税、戸籍、医療、教育などのサービスがマイナンバーですべて管理され、それをオンライン化して、自宅にいながらすべての公共サービスをワンストップで受けられるようにできるはずだ。あれだけ鳴り物入りでスタートしたマイナンバーが、普及さえもしてないということ自体が、異常なのである。

もちろん、どんなにITが進歩して使用のハードルが下がってもアナログな人は残り続けるので、「マイナンバー一括対応課」などの、そういった人たちのためのリアルな相談の場を役所に設ける必要性はある。誰一人取り残さないよう配慮しながらでも、IT化は実現できるはずである。

医療、教育、行政などの進歩は、一般の企業よりもずっと遅いペースが守られてきた。簡単には崩れることのない強固な秩序が作られていたのだ。今回の新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により、それらの領域にほころびができた。

考えてみてほしい。これまで散々切磋琢磨してきた領域は、「強い」企業が跋扈するレッドオーシャンである。しかし、これまでフリーズしていた領域は手つかずのブルーオーシャンだ。動かなかったのには動かなかった理由がある。これまでお伝えしてきた通り、その理由が「既得秩序」だ。しかし、今、この秩序にほころびが生まれ、商機と勝機を秘めたフィールドが広がった。

動かなかったものを動かすよりも、動き始めたものを動かすほうがはるかに楽だ。「既得秩序のほころび」の領域に飛び込む時機がきている。