富裕層が富裕層であり続ける理由

自分が直面している現実に対し、自分がやってきたことや自分の考えを否定しなければならないこともある。

それでもプライドを捨てて自分を適応させる意欲を持ち、大きな流れに逆らわず、抗わず、波に乗ってみたり、別の波が来るまで待ったりする度量も必要。

自分のやり方を変えなければならないと気づくことは、自分の誤りに自覚的になることであり、それまでの自分のやり方に決別し、違うやり方を取り入れること。つまり、変化することです。

それこそが「知性」であるはずで、それを持つがゆえに富裕層は富裕層であり続けるということなのでしょう。

あるいは計画や交渉などにおいて、状況が悪くなったり行き詰まったりしたときに「白紙に戻す」ことが行われます。

これも、問題がこじれる原因となった前提条件や、それまで考えてきたこと、話し合ってきたことなどをいったんあきらめて(リセットして)、ゼロベースで考え直そうということです。

このように、身動きができなくなりそうになったときに「白紙に戻す」というのは、未来志向の発想だといえます。

「水に流す」こともこれとよく似ています。トラブルやミスなどによって生まれた感情的なわだかまり・しこりをゼロクリアして新しい関係を築こうということですから、やはり未来志向でしょう。

こだわりを捨てると人間関係も円滑に

ここでもし、あきらめきれずに当初の予定や自分の意見を押し通そうとすれば対立を生み、人間関係を失うこともあるでしょう。あきらめきれないと、ムキになったり意固地になったりしやすいからです。

自分の考えに固執しすぎれば「いいえ、それは違います」「それには納得できません」などという「面倒くさい人」にもなりかねません。

でも、そうしたこだわりをあきらめることは「譲り合い」になりますから、人間関係が円滑になったり、禍根を残さず別れたりすることができます。

恋愛でも、別れた相手を引きずっていると、すぐそばに素敵な相手が現れても気づくことができません。過去の相手に縛られて周囲が見えなくなっているからです。

しかし、未練や執着を手放すと視野が広がります。今まで気づかなかった状況や変化を客観的にとらえられるようになり、新しい出会いに恵まれやすくなります。

あきらめないのは現状への執着ですが、あきらめるのはそれを変えること、そして未来への再出発といえるでしょう。

ブレないことは実はリスク

同様に、「ブレない」「一貫性がある」というのは、好ましいことのように思いますが、現代のように環境変化が激しい時代にはむしろアダになるリスクがあることにも、敏感になっておいたほうがいいと思います。

さまざまな経験を積み、自分のできることが変わっていけば、ものの見方や考え方、価値観も変わります。

テクノロジーの進化や新しいサービスの普及で以前よりもずっと簡単に、ローコストで、瞬時にできるようになれば、自分はそれ以外の付加価値にフォーカスしたほうがいいという判断になることもあるでしょう。

だからこそ、富裕層は簡単にあきらめることができ、変わり身も速いのだと思います。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。