コロナ後に「働く意欲」は復活するか

問題は、働く気を失ってしまった女性たちが、コロナ後に再び労働力として復帰するのかどうかです。もし復帰しなければ、せっかく拡大してきた女性の職場参加が縮小に転じることになりかねず、私は大きな懸念を感じています。

国や企業は非労働力化した女性たちに対して、コロナ収束後に職場に戻ってもらう工夫をする必要があるでしょう。その際は失業対策のようにただ雇用を増やすのではなく、まず本人たちに働く意欲を取り戻してもらうことが重要になります。失業している人は「働く気はあるのに就職先が見つからない」という状態ですが、非労働力化している人はそもそも就業の意思がないからです。

コロナ禍は、家事育児負担が今なお女性にかたよりがちであること、子どものために仕事を休んだり辞めたりするのは圧倒的に妻のほうであることをあぶり出しました。この結果として表れ始めた女性の非労働力化は、コロナ後の社会にとって大きな課題になると思います。

コロナ対策においては女性・女の子に配慮を

ここまでコロナ禍が女性にもたらした影響について考えてきましたが、これは少子化に対してはどのように働くのでしょうか。働く女性が減れば世帯収入も減るため「家計が苦しくなるから子どもも生まれにくくなる」という人もいるでしょう。また、家事育児負担の増加によって、女性が第2子以降の出産を控える可能性も大きいと言われています。

一方で、テレワークや家庭に専念する女性の増加で「在宅時間が増えると子どもも増える」という人もいるでしょう。現時点ではプラスとマイナスどちらに働く可能性もあり、確実なところは事後にならないとわかりません。今はただ、女性の非労働力化や少子化に歯止めをかけるため、コロナ禍の影響がこれ以上深刻化しないように取り組んでいくしかないように思います。

女性への悪影響では、前述した事柄のほかにも、家族以外の人との接触が制限されることによるDV被害の増加が懸念されています。シングルマザーや、女性が多くを占めるエッセンシャルワーカーは厳しい状況に置かれており、女性の自殺者も急増しています。

当初は、コロナ禍が女性にこれほど悪影響をおよぼすとは予想できていませんでした。これは世界的な課題にもなっており、国連は2020年4月、コロナ対策において女性・女の子の置かれた苦境に配慮するよう声明を出しています。日本でも、女性への影響を注視しながら、必要な対策を着実に実施していくことが大事だと思います。

構成=辻村洋子

筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授

1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。