人気百貨店のいち早い取り組みとは
なかでも今回注目したのが三越伊勢丹グループの取り組みだ。同社は2018年より、企業としてサステナビリティを具現化するため、以下の3点を重要視することとした。
ひとつは「人と地域をつなぐ」こと。私たち消費者がより豊かな生活を送れるよう、世界各国の文化や芸術の紹介、史料の活用、地域産業の活性化支援、そして次世代のクリエイターとの取り組みがそれにあたる。製菓学校生との催事や服飾専門学校生との体験型実学教育など、産学共同はその代表例だ。
ふたつめは「持続可能な社会・時代をつなぐ」こと。これはそもそも安心・安全な商品やサービスの提供、低炭素社会や省資源を推進していくということなのだが、前者は今、依然コロナ禍が続く世の中にあって、通常の商品管理のほかに徹底的な対策を行うことも重要な取り組みのひとつとなっている。社員一人ひとりがコロナ対策への意識を高く持ち、徹底した社員教育などで正しい知識を備えることで、いつもとは違う状況下でのショッピングもより心地のいいものとして提供される努力がなされているのだ。
また後者の低炭素社会や省資源を推進事業としては、店内照明の積極的なLED化やマイバッグの推進、ペーパーレスへの対応、そして食品系廃棄物を焼却ではなくリサイクルすることで、CO2削減に寄与している。さらに一部の店舗では衣料品回収、フォーマルドレスのシェアリングサービス、グループ企業が運営するスーパーマーケットでのプラスチックリサイクルなども行われている。
働く人にもやさしい、それが新時代のサステナブル
同社のサステナブルな取り組みの3つめは従業員満足度の向上だ。子育てサポート企業として厚生労働省東京労働局からすでに認定を受けている同社だが、さらにどんな立場の人でも働きやすい企業をめざして、育児や介護に関わるさまざまな支援制度を実施している。
三越伊勢丹グループは産前・産後休暇、育児休業制度の復職率が約9割であることでも知られ、2020年8月時点では約440人の従業員が育児勤務制度を利用し、仕事と家庭の両立を図っている。子どもがいる女性従業員に対してはフルタイム勤務への早期復帰に向けた支援策や、育児勤務期間終了後の環境変化に対応した勤務制度、さらに復職後には制度利用経験者からのアドバイスが聞けるセミナーなども行われ、復職やフルタイム勤務に向けサポートも充実しているのだ。
今までにもこの連載で伝えてきたように、これからのサステナビリティは、その恩恵を受ける側だけでなく、努力・提供する側も心地のいいものでなくてはならない。誰も置き去りにしない、すべての人にとってやさしい“三方良し”であるべきなのだ。