晩婚化・晩産化・少子化が進行する日本。子育てと介護を同時に担う人が増えてきています。予期せぬ時に突然はじまるのが介護。こんなはずでは……と思う介護者が多いといいます。ダブルケアの研究者が語る過酷な実態とは——。

※本稿は、相馬直子,山下順子『ひとりでやらない 育児・介護のダブルケア』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

公園で車椅子を持つ若い女性
写真=iStock.com/itakayuki
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ダブルケアは「突然」はじまる

「子どもが生まれ、育児に専念しようと思っていたときに、父親が脳梗塞で倒れた」
「子どもを保育所に預けて、職場に復帰してしばらくしたら、親の様子がおかしいことに気づいた」

このように、「突然」はじまるのが、ダブルケアです。

子育てには、妊娠、出産を経て、親としての自覚が芽生え、少しずつ子どもの育て方を学んでいき、親になっていく過程があります。自分のライフステージに合わせて、ある程度計画的に進めることもできます。

それに比べて、多くの介護は「突然」はじまります。カッコつきの「突然」にしたのは、実際には予兆めいたものがあっても、「突然」やってきたと感じるダブルケアラー(ダブルケアをしている人)の方が多いからです。

「子育てを手伝ってもらってから介護」だと思っていたのに

タイミングは人によってさまざまで、赤ちゃんの世話に慣れたと思ったところで、あるいは産後に職場復帰し、子育てと仕事の両立に奮闘している真っただ中で、または子どもが幼稚園に行きはじめて自分の時間ができると思った矢先に、親が自分一人では生活ができないような状況が訪れます。

「こんなはずじゃなかった」と思う方が多いようです。

「介護は、子どもがある程度育ってからくるものではなかったの?」「自分の親が介護をはじめたとき、自分はもう高校生だったではないか」と。

あるいは、親に子育てを手伝ってもらった後で介護がくるのが当然と思っていた、という声もありました。

もっと先にくるはずだった介護が急にはじまり、どうしてよいかわからない。そのような状況にあるダブルケアラーの方に、たくさんお会いしました。

ここで、ダブルケアが「突然」はじまった方の実例を、いくつかご紹介します。