寝室の共有は論外!
さて、次に帰省先で「感染を広げない、ウイルスをもらわない」ための行動条件を考えてみましょう。
□ 帰省先でも手指消毒と「移さないため」のマスク着用を徹底する
□ 宿泊先は自宅ではなく、家族単位でホテルや旅館に宿泊し、従業員との接触を最小限に
□ 自宅に泊まる場合は、両親や同居している家族と寝室を分ける
□ 親戚など大人数での集まりは、中止する
□ 地元の友人との飲み会、会食は「今年は我慢」と予定から外す
□ 大晦日から夜更かしをして寝正月を決め込むと「濃厚接触」になるので、だらだら自宅に滞在しない
□ 外食をする際は個室を予約し、他のグループと接触せずに短時間で切り上げる
□ はめを外して急性アルコール中毒や交通事故を起こさないよう気をつける
□ 初詣は混み合う時間帯や参拝客が多い寺社は避ける
帰省先で感染拡大を防ぐには、とにかく両親や同居家族、親戚、友人との「接触時間を最小限にする」ことがポイントです。寝室の共有は論外で、特にご高齢の家族がいる場合は、大晦日に顔を合わせて食事をした後はすぐホテルに帰り、元旦に改めて短時間顔を合わせるくらいの慎重さが必要です。
また、つい飲み過ぎて急性アルコール中毒や交通事故を起こさないようくれぐれも気をつけてください。寒暖差で心筋梗塞や脳卒中につながりかねない飲酒後の入浴も避けたほうが良いでしょう。地方の救急病院は普段からギリギリの状態であるうえに、正月中は診療所や中小病院の外来が一斉に休日診療体制や休診に入るので手が足りません。
そこにCOVID-19かもしれない帰省客や旅行客が何人も搬送されてくると、一気にその地域の医療が滞る可能性がでてきます。あなたが病気やケガに気をつけることで、結果的に何十人もの人の命が助かります。特に普段から血圧の薬などを飲んでいる方は、飲み忘れないよう気をつけてください。
帰省先から戻った後の行動も慎重に
このほか、地方から流行が拡大している都市部に帰省した場合──例えば地方の大学から大阪、東京に帰省する人は、逆にウイルスをもらって戻る可能性があります。したがって、今の拠点に戻ってからの行動も大切です。
□ 戻ってから2週間は確実に「3密」を避ける
□ 同じ期間、検温、体調の記録を続ける
□ 帰宅後に発熱や倦怠感、味覚・臭覚障害などが生じた場合は、最寄りの保健所あるいはかかりつけ医に連絡をする
□ 症状が生じた場合は、直ちに実家や帰省先で接触した友人に連絡をとる
特に、症状がでた際は保健所への連絡もしくは医療機関への相談と家族、友人への連絡は徹底してください。世間のバッシングが怖くて隠したくなる気持ちはわかりますが、感染ドミノを早い時点で止めるためにはここがキーポイントになります。
こうしていろいろ考えていくと、今年のお正月の帰省は「行って帰ったら終わり」ではなく、「帰省の2週間前〜帰省中〜帰省後の2週間まで」のほぼ一カ月間の生活に影響があり、さらにお金も手順もかかりそうです。
もちろん、全てのハードルをクリアしてでもどうしても帰省しなければならない理由がある方は別ですが、パンデミック真っ最中の今年、「いつも帰っているから」「お正月だから」というだけで、そこまでする覚悟と必然性はあるかを自分に問いかけてみましょう。
構成=井手ゆきえ
1968年生まれ。医師。10年間、外科医として大学病院などに勤務した後、現在は在宅医療を中心に、多くの患者さんの診療、看取りを行っている。加えて臨床研修医指導にも従事し、後進の育成も手掛けている。医療者ならではの視点で、時事問題、政治問題についても積極的に発信。新聞・週刊誌にも多数のコメントを提供している。2024年3月8日、角川新書より最新刊『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』発刊。医学博士、臨床研修指導医、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。