2020年、多くの企業がテレワークへと移行し、働き方が変化しました。ハラスメントに詳しい弁護士の井口博さんは、「テレワーク時代ならではの、新たなハラスメント“テレハラ”が急増している」と警告します。一体、どこまでがセーフでどこからがアウトなのでしょうか……。

※本稿は、井口博『パワハラ問題』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

スマホと並行してパソコンを使用する女性
写真=iStock.com/metamorworks
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コロナ収束後も続けたい人が6割

テレワークというのは、直訳すれば「離れたところでの労働」であり、ITを使って場所や時間にとらわれずに働くことである。

パーソル総合研究所が全国2万5000人を対象にした「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(2020年4月10~12日)では、テレワーク実施率は27.9%にもなった。

テレワークが広がって在宅勤務も増えた。2020年4月7日の緊急事態宣言が出される前に行われた国土交通省の「テレワーク人口実態調査」(3月9、10日に実施)では、在宅勤務率は12.6%であった。それが緊急事態宣言後には増えて、日本生産性本部が5月11日から13日にかけて会社勤めの1100人を対象にした調査では、29%(319人)が在宅勤務だった。

今後、働き方がコロナ以前の状態に完全に戻ることはないだろう。この日本生産性本部の調査では、在宅勤務などをしている人の約6割が新型コロナ収束後もテレワークを続けたいと回答している。テレワーク時代が始まったと言える。

テレワークの限界

テレワーク時代の始まりということで、時流に乗り遅れるなと世の中は大変な勢いである。もちろん、テレワークは、ワークライフバランスを図る観点から積極的に導入すべきではある。しかし、テレワークは世間で言うほどすべてバラ色ではない。こんなことを言うと時代遅れと言われそうだが、そのようなことはない。それほど生産性が向上するというのなら、コロナ以前からもっと導入されていたはずだ。テレワークには当然ながら限界がある。

まずテレワークを導入できる企業とできない企業がある。工場や飲食店はそもそもテレワークに向いていない。それ以外にもさまざまな問題点がある。