人気のハッシュタグに乗っかるリスク

人気のハッシュタグや「○○の日」などにちなんだ投稿は情報が拡散しやすく、多くの企業公式アカウントでも活用している。しかしその結果、消費者が一気に不信感を高める結果となった。公式アカウントである以上、これが企業としての自社商品の扱い方であり企業姿勢だと捉えられたからだ。

今回の炎上の一因は、タカラトミーの公式ツイッターの運営体制にあると考えられる。過去に公式ツイッターの担当者が取材に答えた内容によると、同社の公式ツイッターはここ5年ほど一人でアカウント運用を行ってきたようだ。

ダブルチェックの体制はあったが、今回の投稿はチェックされていなかったという。ただし、19年秋に行われたイベントでは、タカラトミーのツイッター担当者は承認フローがなくなったという趣旨の発言をしており、ダブルチェックが行われない投稿が常態化していた可能性もある。

そもそも同社の投稿内容については、以前から危うさが指摘されていた。「パンツの日」とされる8月2日には、「リカちゃんのかわいいパンツセット」のリンクととも「ぱ! ん! つ! ぱ! ん! つ!」とパンツを振る人型の絵文字を投稿していた。明らかにリカちゃん人形で遊ぶ子どもや保護者向けの目線では書かれていない投稿だ。

こうした投稿内容に関しては、昨年(2019年)6月の同社の株主総会でも株主から「今までの(企業公式ツイッターの)イメージを覆すような、ノリの良い兄ちゃんのような感じだが、トランスフォーマーを『見る抗うつ剤』とツイートしたりする等、危なっかしいところもあり、暴走してしまうのではと懸念している」と指摘がされていた。

これに対し、同社の小島一洋社長は、「懸念が出たこと事態は真摯に受け止める。ツイッターによる広報は重要でこれからも創意工夫していく。懸念されていることについては事前にチェックする対策をしているが、それは今後も継続していく」と回答していた。

今回の事態を見ると、危うさがありながらも事前チェックで内容を精査することを怠っていた姿が浮かび上がる。

企業の公式アカウントの炎上は意外に多い

こうした企業の公式ツイッターアカウントでの炎上事例は後を絶たない。

炎上事例で最も多いのは、「誤爆」と呼ばれるものだ。誤爆とは、公式アカウントの担当者が自身の個人アカウントやDMへの投稿と間違えて、個人的な内容を公式アカウントに投稿してしまうことを指す。最近では、8月に日経QUICKニュース社が、「首相辞意で乱高下」という日経平均株価について伝える記事にリンクを貼りながら「キターーー」と投稿し、直後に訂正している。

その他、人気の企業公式アカウントに多いのが、企業公式アカウントでありながら運用担当者である「中の人」が個人的な見解を書き、その内容が批判されて炎上するパターンだ。

企業の公式アカウントに人気が出る理由の一つは、オフィシャルで堅苦しいはずの公式アカウントを身近に感じさせる工夫にある。公式のはずなのに「中の人」の人柄を垣間見ることができたり、会社や商品の宣伝以外にもインターネット上のカルチャーや文脈をよく理解した“ウケる”投稿をしたりすることで人気を集めるのだ。

それだけに、公式と言いながらも、担当者の個人的な見解の投稿も増えがちになる。タカラトミーのツイッターフォロワー数は執筆時点で約38万人だが、82万人を誇るシャープや41万人のキングジムも過去にツイッターの「中の人」の投稿が炎上した。

キングジムの投稿では、カリスマ美容師よりフォロワー数が多いという趣旨の“上から目線”に捉えられるようなツイートをしたことで、「美容師さんに失礼」「奢りがある」などと批判的なツイートが寄せられた。

そして、最も企業が避けたいのが、“話題化”(情報発信により世間の話題になること)を狙った投稿により、逆にユーザーから反発を受け炎上するパターンである。2018年には、キリンビバレッジの公式アカウントで「#午後ティー女子」が炎上した。

自社製品である「午後の紅茶」を飲んでいそうな女性として、人気のイラストレーターによる「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」など4パターンのイラストを公開。“あるある”ネタとして話題化を狙ったが、「女性客をバカにしている」と炎上した。

今回のタカラトミーの投稿は、「個人の見解」と「話題化」が悪い意味で複合的に絡まって炎上したとも言える。

また話題化を狙っての炎上は、女性同士が裏で足を引っ張り合う様子を描いたロフトのバレンタイン動画や、女性を容姿で判断するようなストーリーで批判されたルミネの動画など、ツイッターに限らず企業広告でも枚挙にいとまがない。