現場の医療従事者は一人も死なせたくない
【高山】こうした厳しい事態を避けるためには重症化しやすい高齢者を守り、感染を拡大させない行動を続けるしかありません。
現場の医療従事者は全員が「一人も死なせたくない」という気持ちでがんばっています。しかし感染爆発が起こってしまうと、押し寄せる波に耐え切れずに医療崩壊という最悪の事態が起こってしまうのです。COVID-19で亡くなる方ばかりか、他の病気でも普通であれば助けられた命を失うことになってしまいます。
大型連休が近づいています。友人、知人と久しぶりに集まりたいという気持ちがあると思いますが、どうか地方への帰省や旅行は中止してください。これまでに集団感染が確認されている温泉施設、スポーツジム、夜の飲食店などへは出かけないでください。人が集まらなければウイルスは拡がりません。やるべきことは分かっています。お互いの物理的な距離は開いていますが、力を合わせていきましょう。いま我慢をすることが皆さん自身を守り、家族や地域を守ることにつながります。
構成=井手ゆきえ 写真=iStock.com
福岡県生まれ。東京大学医学部保健学科卒業後、フリーライターとして世界の貧困と紛争をテーマに取材を重ねる。2002年山口大学医学部医学科卒業、医師免許取得。国立病院九州医療センター、九州大学病院での初期臨床研修を経て、2004年より佐久総合病院総合診療科にて地域医療に従事。この頃より人身売買被害者を含む無資格滞在外国人に対する医療支援を行なう。2008年より厚生労働省健康局結核感染症課においてパンデミックに対応する医療提供体制の構築に取り組む。2010年より沖縄県立中部病院において感染症診療と院内感染対策に従事。また同院に地域ケア科を立ち上げ、退院患者のフォローアップ訪問や在宅緩和ケアを開始。『アジアスケッチ 目撃される文明・宗教・民族』(白馬社、2001年)、『ホワイトボックス 病院医療の現場から』(産経新聞出版、2008年)、『地域医療と暮らしのゆくえ 超高齢社会をともに生きる』(医学書院、2016年)など著書多数。