知っておきたい慰謝料請求リスクと懲戒処分リスク

つきあっている男性に奥さんや子どもがいるとわかったら、もちろん即座に別れるのが正解です。しかし私の知る限り、そんなことができる人はほんの一握り。私がいくら「やめたほうがいいですよ」と忠告しても、ほとんどの人は重い葛藤を抱えながら、関係を断ち切れず苦しむことになります。

しかし繰り返しますが、本当は相手が既婚者であるとわかった時点で関係を解消し、すぐに弁護士に相談するのがベスト。その理由は3つあります。

まずは、相手の男性から慰謝料を受け取れる可能性があること。

2つめは、たとえ知らなかったとはいえ不倫関係に陥った以上、男性の妻から慰謝料を請求されるリスクを負っていること。

3つめは、勤務先から懲戒処分の対象にされるかもしれないことです。いまは不倫に厳しい時代になっているので、特に相手が同じ社内の人間だったりする、なんらかの処分を受けるリスクがあります。

別れ話の履歴を残しておく

とはいえ、急に別れるのは難しい場合もあるかもしれません。男性の意向を無視して強硬に別れようとすると、ストーカーやリベンジポルノなどの被害にあう危険性もあります。

このような場合は、結論を出すのは先送りしても、せめて別れ話だけは早めに切り出しておき、そのやりとりをラインやメールなどに残しておくことです。それが後日、「私は既婚者とわかった時点ですぐに別れようとした」という証拠となります。できればそれに加えて、「私は付き合い始めたときはあなたが既婚者だとは知らなかった」という文言も残しておきましょう。

ちなみに裁判になった場合、自分が「既婚者とは知らなかった」という事実を証明する必要はありません。なぜなら「知らなかった」ということは厳密には立証不可能。このような場合は「主張立証責任」といって、「本当は知っていたはずでしょう」と主張したい側(相手の奥さんなど)が証拠を揃えるのがルールです。

結婚の約束があった場合は?

さて、先ほども言ったように、不倫はこれだけリスクが高いにもかかわらず、相手が既婚者であることを知ってもなかなか別れられない人もいます。本当に知らなかったのは最初のうちだけで、つきあいが長くなればなるほど、「知りつつ不倫」になっていく。続けていくほど相手の妻から慰謝料請求される可能性は跳ね上がります。

ただし、相手の男性が「妻と別れてきみと結婚する」と約束した場合は、こちらから男性に慰謝料請求できる可能性が高くなります。ただし結婚の約束があったと主張するのであれば、単なる口約束ではなく、できればラインやメールなど残るものがあったほうがいいでしょう。直接「結婚しよう」という言葉がなくても、「将来について考えてくれて、うれしい」など、なんとなく結婚をにおわせる内容であればOK。まったく何も証拠がないよりはましです。