その結果、日銀の貸借対照表(B/S)では、負債が膨らんでいるのがわかる。20年前の1998年の時点では86.2兆円だった負債合計が、2018年には553兆円に。このうち紙幣(日本銀行券)発行高が108兆円で預金が421兆円。預金の394兆円は当座預金で、これは金融機関が日銀に預けているお金。この2つのお金を使って、何とか乗り切っている状態だという。しかし、お金が増え続ければ、貨幣価値が下がってインフレになる可能性は高くなる。

急激なインフレではないが、物価は確実に上がっていると指摘するのはファイナンシャル・プランナーの深野康彦さん。「身近なところでいえば、ブルボンのお菓子“ルマンド”は中身が1本減りました」

ただ、物価はジワジワと上がっているが、日本の財政状態は、それほど深刻ではない、とも言う。

「IMF(国際通貨基金)が公表している統合政府のB/Sを見る、という考え方があるからです」

これは、日銀は公的機関なので、政府と合わせて統合政府として計算するべきだという考え方だ。これによると、日本の負債合計は1558兆円になるが、政府にはさまざまな国有資産があるので、その合計は1530兆円で、実質的な負債は28兆円という計算になる。

経済が成長する国こそお金を増やすことができる

日本の財政状況について両者の意見は分かれるが、では、私たちのお金はどうすればいいのか。

過去の実績として日本と米国の株価の推移を見ると、日経平均株価はバブルピークの1989年に4万円弱に達した後、当時と比較して40%減の状況が続く。一方ニューヨークダウは、同じ期間で10倍に伸びている。100万円を株で運用していたとすれば、日本株では60万円に目減りしているが、米国株なら1000万円に増えていたことになる。なぜ、このような差が生じるのだろうか。

「それはGDPの成長の違いです。米国は過去30年間で3.5倍になっていますが、日本は1.6倍にしかなっていません」(藤巻さん)

ちなみに中国は同じ期間で33.5倍に成長。これは日本で中国人観光客が急増したことにもつながっている。中国の経済を80年と現在で比較すると、人民元のレートは10分の1にまで下落。中国でモノをつくれば安く輸出できるようになったので、中国は世界の工場になった。それによりGDPは220倍まで成長。円を基準に考えると人民元が10分の1になったので、経済成長の効果も10分の1で22倍になるが、それでも日本の1.6倍と比較すると驚異的な成長となる。結果、中国にとって日本は物価が安い国となり、観光客が押し寄せている。