女子のアパートの家賃は高くなる傾向に
こうした状況において、東大の家賃補助という制度は、東大に進学したくとも家賃がハードルになっている女子にとって、心強い後押しになるのです。女子が住むアパートの家賃は男子のそれよりも高くなる傾向にあるのでなおさらです。
わたしたちの仲間である女性の上京体験に以下のようなことがありました。入学当初は大学の寮で暮らしていましたが、退寮することになり大学から比較的近いオートロックの整った物件を探すことになりました。条件に合致する物件は寮の10倍近い家賃になり、生活が厳しくなることが予想されました。しかしひとり暮らしの女性が犯罪に巻きこまれたというニュースを頻繁に目にしていた彼女は、安全性の高い住宅を希望せざるをえなかったといいます。
以上のように、進学機会が平等でなく、家賃がネックとなって進学に支障が出るような女性に家賃を補助するような制度は逆差別ではなく、積極的差別是正(アファーマティブ・アクション、ポジティブ・アクション)として考えられるものなのです。(前之園)
▼藤村正司「なぜ女子の大学進学率は低いのか?――愛情とお金の間」(『大学論集』広島大学高等教育研究開発センター、2012年、所収)43:99‐115.
▼石川由香里「子どもの教育に対する母親の地域移動効果──地域間ジェンダー格差との関わり」(『教育社会学研究』日本教育社会学会、2009年、所収)85:113‐33.
▼上野千鶴子『女たちのサバイバル作戦』文藝春秋、2013年
▼四本裕子「家賃補助は女性優遇か?」(『教養学部報』東京大学教養学部、[2017年]2018年、所収)592.
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