女子への教育投資は優先順位が下がりがち

[JUMP]

複数のきょうだいがいる家庭では、女子にたいする教育投資の優先順位が低くなる傾向にあることがわかっています。その理由を、上野千鶴子は、娘は「いずれよその家に仕える他人になると思われていたから」だといいます(上野 2013:127)。たしかに、進学希望をみると、学力があっても所得水準が低いために、4年制大学への進学を断念し、短期高等教育機関に進学する女性が層として存在することがわかります。

奨学金もあるとはいえ、貸与奨学金制度は、卒業後に返済しなければならない負債となるため、将来の子どもの負担を少しでも減らそうとする親の気遣いによって娘の4年制大学への進学希望が抑制されがちであると指摘されています(藤村 2012)。このようななか、大学進学にともなって家賃がかかる場合には、大学で学びたい女性にたいする「教育投資」はますます抑制されることになるでしょう。

「親の期待」に大きな男女差が存在

また、4年制大学への進学にたいする親の期待にも、男女差があるといわれています。東大の家賃補助を報じた新聞には、「女の子が無理して頑張らなくてもいいのに」、「なぜ東京に行くの?」という女子学生の家族の言葉が紹介されています。一方で、「自宅外通学を理由に受験を反対された人たちのあいだでは歓迎の声があがる」と記されています(『朝日新聞』2016.12.26)。

「女子は家を出てまで大学に進学する必要はない」、「女子は浪人しないほうがいい」、「子ども全員を自宅から離れた大学に入れる経済力はないから、女子のあなたは家から通える大学にしてほしい」という話が地方の家庭ではめずらしくないといわれています(四本[2017]2018)。この結果、地方都市から大都市への子どもの移動にはジェンダー差があらわれることになるのです。

親が男子に4年生大学への進学を期待する割合は、大都市で75.0%、地方都市で73.5%とほとんど変わりませんが、女子の場合は大都市で52.6%、地方都市で45.4%と有意差がみられます。さらに、地方では、男子の県外移動を当然視する一方、女子の移動をためらう親の意識が存在することも指摘されています(石川 2009)。

つまり、女子は、男子に比べて親から大学への進学を期待されず、大都市に出ることを反対される傾向があるということです。大都市に向かえば必然的に発生する家賃の存在によって、女子への進学期待がさらに薄まることは十分に予想されるでしょう。