おごってもらえない女子は「損」なのか

【丹羽さん】損しているとは思いません。おごってもらって当たり前とか、それを自慢しているような女子を見ると「自立していないな」と思いますね。パパ活している人も、戦略としては賢いのかもしれないけど、自分で女っぷりを下げている気がします。

異性との食事では多めに支払う派の山田君(左)と「おごってもらえなくても損していると思わない」と言い切る丹羽さん(右)。

【長谷川さん】男性に全額出してもらって自慢している人は、同性として尊敬できないというか、女子ウケは悪いですよね。私もワリカンが損だとは思わないです。確かにバイト代だけでやっていくのは大変なので、食事代や飲み会代が浮いたらうれしいとは思いますが、それってお金の面だけでの話だから。相手が同世代なら、関係性とか気持ちとかも含めて、平等に払うのが普通だと思います。

【浅見さん】私も損だとは思いません。大学生同士なら収入もそんなに違わないはずだし、同じ立場ですよね。状況を見て多く出してくれたら、心遣いがあるなと思いますが、ワリカンだからってマイナスイメージを持つことはないし、自分の分はスッと払える自分でいたいです。

「ワリカン」は男子から認められた証拠

【原田】男女平等意識が進んだこともあるのかもしれないね。平等になった結果、女子も自分で負担するケースが増えたと。それって男女平等のデメリットだとは感じていないのかな?

【丹羽さん】思いません。男女平等になった結果おごられなくなったんだとしても、平等はいいことですよね。実際、同世代の男子に「ワリカンで」って言われたら、同等だと認められている気がします。私はまだ働いたことがないんですが、この先社会に出ても同じ考え方でいると思います。

【原田】そういう考え方の女子が続々と社会に出ていくわけだから、今後は男女平等意識がさらに高まっていきそうだね。そういえば以前、アジアから来た男子留学生が、日本の女子は二面性があるって言っていたのを思い出したよ。女性らしい主張をする一方で、男女平等もしっかり主張すると。この両方を兼ね備えている人は、言い方は悪いかもしれないけれど、ある意味したたかに、かつしなやかに社会を渡っていけるような気がするよ。

若者の男女平等意識は、仕事だけでなく、お金に関しても確実に高まっているように感じます。男女で収入差があるという実感も薄いようですし、おごられるのを当然だと思っている女性に対しては「自立心がない」という意見も飛び出しました。今の若者は男女関係なく、ワリカンが前提のライフスタイルを確立しつつあるようです。では、このライフスタイルは、彼らの消費意欲や希望収入額にどんな影響を与えるのでしょうか。次回からは、その疑問への答えを探っていきたいと思います。

写真=iStock.com 構成=辻村 洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。