男女ともに未婚率が急上昇し、50歳の時点で婚歴がない男性の割合は4人に1人に上る。昔も今も、若い世代の9割が「いずれ結婚するつもり」と考えているにもかかわらず、なぜ未婚率が上昇するのか。多くの人が考えうる回答の1つが「お金がないから」「景気が悪く収入が下がっているから」というものだ。では本当にお金がないから結婚しないのだろうか――。ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員の天野馨南子さんが、データをひもとく。

※本稿は天野馨南子『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/takasuu)

そもそも「お金が足りない」状態とは?

「生涯未婚率がなぜ上昇していると思うか」という問いで最も多かった回答が「雇用・労働環境(収入)が良くないから」というもので、38.7%を占めています【図表1】。この結果を踏まえて、「お金が足りないから結婚できない」という一般感覚の妥当性について検証します。

生涯未婚率がなぜ上昇していると思うか

まずは、「そもそも『お金が足りない』と思う金額はいくらなのか」ということについてのデータを見てみたいと思います。回りくどいように思われるかもしれませんが、ある事柄についてのお金の過不足の真偽を考える際には、大事な確認事項です。

「お金がない・足りない」という表現はかなり印象論的な表現です。実際どれくらいの金額を「足りない」と感じているかによって、その感覚の妥当性(感覚が浮世離れせず現実的なものかどうか)が変わってくるからです。

たとえば、お金が足りている状態を「世帯年収800万円」と考えているのか、「世帯年収400万円」と考えているのかで、両者の「足りない」という感覚自体の妥当性が大きく異なります。さすがに前者に対しては「そんな高望みをしていたら、日本のほとんどの人が結婚できないよ」と多くの人が思うと思います。