※本稿は天野馨南子『データで読み解く「生涯独身」社会』(宝島社新書)の一部を再編集したものです。
そもそも「お金が足りない」状態とは?
「生涯未婚率がなぜ上昇していると思うか」という問いで最も多かった回答が「雇用・労働環境(収入)が良くないから」というもので、38.7%を占めています【図表1】。この結果を踏まえて、「お金が足りないから結婚できない」という一般感覚の妥当性について検証します。
まずは、「そもそも『お金が足りない』と思う金額はいくらなのか」ということについてのデータを見てみたいと思います。回りくどいように思われるかもしれませんが、ある事柄についてのお金の過不足の真偽を考える際には、大事な確認事項です。
「お金がない・足りない」という表現はかなり印象論的な表現です。実際どれくらいの金額を「足りない」と感じているかによって、その感覚の妥当性(感覚が浮世離れせず現実的なものかどうか)が変わってくるからです。
たとえば、お金が足りている状態を「世帯年収800万円」と考えているのか、「世帯年収400万円」と考えているのかで、両者の「足りない」という感覚自体の妥当性が大きく異なります。さすがに前者に対しては「そんな高望みをしていたら、日本のほとんどの人が結婚できないよ」と多くの人が思うと思います。