高給・仕事漬けの毎日から脱却!“お茶”がくれた仕事のやりがい

「台湾のシリコンバレー」と呼ばれる新竹市は、そのネーミング通りIT関連の企業や工場が集まる都市だ。張瑛育(チャン・インユー)さんはこの街で生まれ育ち、就職。一貫してIT企業の営業畑を歩んできた。台湾はIT先進国であり、この分野は経済を支える重要な産業だ。

(写真左)チャン・インユーさん。新北市にある茶畑で、お茶の生育状況を観察する。(右)趣味の「刺し子」の作品。台湾で多くのファンを増やしている。

「お給料は一般企業の大卒者と比べて3倍ぐらい高かった。稼いだお金でブランド物をバンバン買い、週末は香港に行き超高級ホテルに泊まって豪遊していました(笑)」

しかし高額な給料は、早朝から深夜までの長すぎる労働時間の代償だった。お金はあるけれど仕事漬けの毎日に疑問を持ち始めたころ、クライアントだった中国企業の社員や友人から、台湾のお茶を買って来てほしいと頼まれる。台湾の良質なお茶は中国でも人気で、そのうち何百キロもの茶葉の購入を依頼されるようになった。祖母が台湾各地に茶畑を持っていたので、お茶の販売をビジネスにできないかと考え、会社勤めをしながら自身のブランドを立ち上げたのだ。

「茶葉のパッケージデザイン、ロゴ、ブランドのコンセプトなど、自分の感性を商品に反映できたので、とても楽しかった。“私は、本当はクリエーティブな仕事がしたいのだ”ということに気づいたのです」

しかし大きな投資をした割には、なかなか利益を出すことができない。そのうえ無理がたたって体を壊し、当時勤務していた会社を辞めざるをえなかった。しかしお茶の事業は、大好きな祖母の茶畑を守るためにも、簡単に投げ出したくなかった。

愛読書の『The Karma of Love』。

幸いにも、語学に堪能でITに精通している瑛育さんは、就職に困ることはなかった。健康を第一に考え、以前より給料は低いが、時間に余裕を持って働ける企業に勤めつつ、お茶の事業も続けることにした。

「今の会社で豪遊はできないけれど、経済的な安定という意味では十分です。そして、お茶の事業はクリエーティブな欲求を満たしてくれる。茶畑に行って自然に触れると、都会の生活で疲れた心も癒やされます。お金とやりがい、私にはどちらも必要なのだと、さまざまな経験から学びました」

▼1日のスケジュール
7:30 起床。
8:00 朝食。台湾流の卵巻き餅で朝食。
9:00 出勤。メールチェック。開発中プロジェクトの会議。量産商品の注文追跡。顧客との定期会議など。
19:00 退社。
19:30 夕食。
20:00 刺し子の制作。Facebookのファンページの回答。
22:00 父と犬の散歩に出る。
23:00 入浴後、就寝。
▼my favorite
●好きな映画:タラジ・P・ヘンソン主演『Hidden Figures』
●美容や健康:ジムで汗を流す
チャン・インユー(張 瑛育)
製茶会社経営・IT企業社員
1981年、新竹市生まれ。国際基督教大学への留学を経て台湾静宜大学卒業。台湾や香港のIT企業で、主に中国担当の営業職に。2007年にイギリスの大学に留学。11年に起業。

撮影=熊谷俊之、劉 徳鴻