女性がご飯を作らなくても周りから非難されない。夫より稼ぐ妻も珍しくない。南国特有の持ち前の明るさで生きる台湾人女性たちの仕事に対する思いとは?

経営者として「世の中の役に立ちたい」。プライベートでは10人の養子の母親

台湾では日常的に外食が当たり前。屋台、ナイトマーケット、レストランなどで家族で食事をするのが一般的だ。鄭惠如(チェン・フェイルー)さんは日本でも展開され始めた「火鍋」(中国風しゃぶしゃぶ)が人気の「食藝鍋文化店」を経営している。SNSを活用して店の情報をこまめにアップデートし、幅広い年齢層のリピーター客を獲得。質の高い食材や無添加のスープなどを利用しているため、価格は決して安いわけではないが、有名なアーティストのオブジェなどを店内に設置しているので、感度が高い若者たちにも注目度が高い。

(写真左)チェン・フェイルーさん。店内にはいたるところに生花が飾られている。(右)台湾原住民の王族風の結婚式をしたときの写真。

しかし惠如さんとその店が評価されているのにはもうひとつの理由がある。単なる利益追求の組織ではなく、“社会的企業”としての意義が大きいことだ。

「私も共同経営者の女性も学生時代から、だれかの役に立ちたいという思いが強く、週末や長期の休みなどには、各方面にボランティアに出かけていました。企業の経営者としても何かできないかと考えて、社会的にも経済的にも弱者を積極的に雇用し、彼らのキャリア支援になればいいと考えたのです」

さらにはPCやスマートフォンを使って、仕事が未経験のスタッフでも3日以内に仕事のプロセスを覚えられるようにして離職を防ぎ、スタッフの教育や生活支援のために店の純利益の30%を貯蓄している。

プライベートでも社会貢献をしており、惠如さんは結婚前になんと10人の養子を迎えた。実子は1人。

スマホで店の情報を拡散。写真をきれいに撮るためフラッシュを外づけ。

「だから私の息子のあだ名はイレブンです(笑)」

建築家の夫も自営業で、オフィスを共有している。朝夕の食事は自宅で、昼食は一緒に外食するなど、ずっと一緒に過ごす日もあるという。

「夫とは仲が良いですね。結婚式は通常の式とは別に、台湾原住民の王族風の結婚式を挙げました。2人とも旅が好きで、『新婚旅行がてら記憶に残る式ができるね』と盛り上がって。趣味嗜好(しこう)が合うんです」

自分と家族だけでなく、社会全体も幸福になるにはどうしたらいいか。惠如さんの崇高な理念が、もっと大きな結果をもたらす日が、いつか来るに違いない。

▼1日のスケジュール
7:30 起床。テレビでニュースを見る。
8:00 息子の保育園の支度をする。
8:40 オフィスに行く。
9:00 さまざまな事務の仕事をする。
12:00 夫と昼食。
14:00 取材を受ける。メンターとして助言したり講演会でスピーチしたりする。
18:00 帰宅。
19:00 家族と夕食。カレーが多い。
20:30 レストランからの報告を受ける。
21:00 子どもと遊び、本の読み聞かせ。
23:00 就寝。
▼my favorite
●好きな映画:アン・ハサウェイ主演『マイ・インターン』
●愛読書:ロンダ・バーン著『The Secret
チェン・フェイルー(鄭 惠如)
レストランチェーン経営
1988年、新北市生まれ。国立台湾師範大学院修了。2014年に食藝鍋文化店の経営母体のGood Food Enterpriseを起業。18年に米「フォーブス」誌の「アジアの30人の女性」に。