また女性からも「タナボタで出世するなんてイヤ」「能力が未熟なままで管理職に上げられても自信がない」という声が出ますが、民主主義の意思決定では「数が多い」ことが重要です。女性の労働環境を本気でよくしたいなら、まず引き受け、多数決で要求を通すための頭数になることも大切なのです。

政治参加が制度実現の近道

そして、クオータ制の法制化実現のためには、女性の政治参加が不可欠です。つまり、まず女性のための圧力団体をつくる→ゆくゆくは女性だけの政党にする→その政党の働きで、議員・管理職へのクオータ制適用を法制化する、という流れです。ただし、政策実現を真剣にめざして政治参加をするなら、過激になりすぎない、国民目線から浮かない、要求しすぎないなど、注意点はいろいろあります。

イラスト=おぐらきょうこ

スウェーデンでは05年に世界初の女性のための政党「フェミニスト・イニシアティブ」が設立されましたが、主張・活動ともに過激になりすぎて、なかなか議席が取れず、苦戦しています。その教訓を生かすなら、働きかけは「穏やかで、共感できる、ささやかな要求」がいいでしょう。

「世の中を変える」ことは確かに大事ですが、それはあくまで「ゴール」。本気で変えたければ、小さなことから始めて、まずは社会に受け入れられましょう。心配しなくてもクオータ制の法制化は、想像以上に社会を変えてくれるはずです。

そのための第一歩は、女性が“必ず”選挙の投票に行くことです。女性有権者が全員投票に行けば、世の中は必ず変わります。行動あるのみです。

蔭山克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師
「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。経済史や経済学説に関する著書はベストセラーに。

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