女だから、男だからと考えるのはおかしい

当時の三菱電機の社内において、マルタさんは外国人であると同時に数少ない女性エンジニア。二重の意味でマイノリティーだった。そんな彼女の存在は、保守的だった職場の雰囲気を徐々に変えていったようだ。

Essential Item●日本語はかなり上達したものの、打ち合わせや会議の記録は英語かイタリア語。気分転換用のミントタブレットは強刺激タイプが好み。

「彼らが定年でいなくなった後、久々に会ったときにこう言われました。『けんかもしたけれど、君が来たときには、いろんなことを考えさせられた』って」

2008年に日本での永住権を取得し、雇用形態も正社員になった。3年ほど前に同じ職場の日本人男性と結婚。「寒い季節には自宅で一緒に日本酒を飲んだり、料理をすることもあります」と少し照れくさそうにほほ笑む。

クリスマスの時期など年に2、3度はイタリアへ帰り、両親とゆっくり過ごす。そうした時間を大切にしながら、技術者として興味のある分野を深めていく――彼女の続けてきたスタイルだ。

「周りの人を変えるのは時間がかかりますから、自分が周りに合わせて変わるほうが簡単です。でも、女性だから、男性だからと考えるのはやっぱり変。私はおかしいと思うことは我慢せずにはっきり言ってきました。人間はみんな同じだとストレートに考えたほうが、最終的にはうまくいく。それがこの会社で20年以上を過ごしてきた私の実感です」

▼マルタさんの1日のスケジュール
(6:30)起床、シャワー、夫と一緒に朝食
(7:00)バスと電車で通勤
(8:30)出社。打ち合わせ、電話、資料作成など
(12:00)散歩&ランチ
(12:45~19:00)仕事再開。顧客の事務所への説明など
(21:00)夕食。同僚か顧客と一緒に食べることが多い
(23:00)帰宅。歯磨き
(23:15)就寝

撮影=市来朋久