この50年でお墓を巡る考え方は大きく変わった
横浜霊園が順調に機能していた頃には、生前に墓を建てる「寿陵(じゅりょう)」ブームがあった。高度経済成長期に地元から都心に移り住んだ人々が老後を考えるようになり、都心近郊に新たな墓地の需要が生まれた。そこに区画を売りたい霊園や墓石を売りたい石材店の思惑、さらにバブル時代の空気が重なって、何百万円もする“終の住処”が飛ぶように売れたのだ。
このブームの根底には、「お墓は永遠の存在」という前提(あるいは願望)があったように思う。墓を買っておけば、子供や孫、ひ孫と先々の代まで守っていってくれる。やがて末裔たちも自分たちの遺灰の隣に安置されて守られる側に回り、さらに先の世代が墓を守り、手を合わせにやってくる――そんなストーリーが疑いなしに共有されていた節がある。
確かに横浜霊園のように倒産状態が長く続く墓地であっても、墓参客は途絶えていない。器にひびが入ったとしても、支えてくれる子孫がいれば墓は機能し続けるのかもしれない。しかし、引き継ぐ人がいない無縁墓が増加しているのもまた事実だ。
無縁墓が増えている
無縁墓は撤去する1年以上前に官報に公告する必要があるが、2014年にNHKの報道チームが全国の官報を調べたところ、2013年には9000人分と10年で倍増していることが分かった。また、熊本県人吉市が2013年に市内の墓地995カ所の状況を調べたところ、全体の4割が無縁墓化していると判明したという。今後、地元で墓を守る人が高齢化して維持が困難になるケースは増えていくだろう。地元から出た人が盆や正月に定期的に帰省してケアするのも、やはり高齢化とともに厳しくなっていくはずだ。
それを裏付けるように、近年では墓を閉じる「墓じまい」や、元のお墓から遺灰などを取り出して別のお墓へ移す「改葬」といった手続きに注目が集まっている。全国の改葬件数は、2000年前後は7万件前後で推移していたが、2005年に急増。その後も2015年度も9万件を超えるなど、長期的に伸びが続いている。