Case 4:ビジョンを語って、チームを率いる
▼チームは同じゴールを目指す船。その光景をあなたは語れるか
マネジャーには、社の方針を「自分の言葉で語る」スキルが必要。
「シンプルかつ刺さる言葉であること、そして流行ることが肝心です。サイバーエージェントが新制度の名称を、『ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く』という意味を込め、『macalon』とした例は秀逸でした」(中原さん)
野村さんも、「ラップを刻め!」など、耳に残るフレーズに落とし込んでビジョンの共有をしている。
「すばらしい工夫ですね。フレーズをつくる場合は、日頃慣れ親しんだ言葉よりも、なじみのない言葉のほうが心に残ります」(中原さん)
言葉が目標を明確にする武器になる一方で、モノの言い方ひとつで仲間を傷つけてしまう人もいる。そんなとき、松田さんは、「その台詞は聞きたくなかったな」とひと言。
「言うべきでない、と注意するよりも、聞きたくなかったと主観に置き換えるほうが確かにマイルドですね」と中原さんも賛同。
「他のメンバーは、マネジャーが問題発言にどう対処するかを見ていて、この一言で溜飲を下げる。問題の部下には、『これからのことは2人で話そうか』と一言添えれば、傷が浅くてすみます」
1対1で話す際は、同じゴールを目指す船に今後も乗り続けるかどうか、本人に選ばせることが肝要。
会社の目標が高すぎて部下が疲弊している場面でも、やはり、言葉がけは重要だ。森上さんは、その仕事をする理由を全員で共有してからゴールのめどを示しているという。
「進捗(しんちょく)を確認して、成果を出せるように導くのがマネジャーの仕事ですから、森上さんの方法は正しい。ただ、スイーツで釣るのは最後の手段にしましょう(笑)」(中原さん)
モスフードサービス CSR推進室 社会環境グループ グループリーダー 松田由美子
部下は5人(男性3・女性2)。地球環境への配慮や社会貢献活動を実施している部門。コミュニケーションレポートをまとめるなど、CSR推進室との橋渡し的な業務が中心。職場でプライベートな話をあまりせず、ほどよい距離感を保っている。ただし、同期の存在は特別で、情報交換をかねて飲むことも。
JTBコーポレートセールス 営業第三課長 野村健児
部下は13人(男性6・女性7)。JTBグループで主に、企業や自治体など法人向けの企画提案を推進・展開。クライアントには女性も多く、「女性からの評判が高い」と上長のお墨つきあり。プライベート情報は自らどんどん明かし、部下(おもに男性)からも聞き出す。3児の父親。
日本ハウズイング 第一事業部 課長 森上小友美
部下は9人(男性4・女性5)。分譲マンションの管理受託に関する業務を行う部署。おかしいと思ったことは胸にしまわず、その場ですぐ本人に伝える主義。ただし注意するときは、暗い雰囲気にならないよう心がけている。一般職から初めて管理職に抜てきされた、期待の星。独身。「課長は男に厳しいです!」と男性部下にぼやかれたことも。
監修 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授 中原 淳
1975年北海道生まれ。現代の悩めるマネジャーに新しい人材育成法を説く『駆け出しマネジャーの成長論』(中公新書クレラ)、『フィードバック入門』(PHPビジネス新書)をはじめ著書多数。近著は『育児は仕事の役に立つ』(光文社新書)。
撮影=佐々木 康