ブルボンヌさん(女装パフォーマー)、光浦靖子さん(タレント)、筒井義信さん(日本生命 代表取締役社長)が、交代でお悩みに回答する本連載。仕事や私生活でモヤモヤしていることを一緒に解決してくれます。今回の回答者はブルボンヌさんです。

【今回のご相談】
異動でやってきた同僚(女性)は、某有名人の血縁者。彼女の企画はツメが甘くてもすべて採用され、問題が起きたら、上司が私と後輩に「フォローしろ」と命令します。彼女が来てから明らかに残業が増えているのに、本人はさっさと帰り、習い事(ゴスペルやダンス)を楽しんでいる様子。この苛立ち、どうすればいいでしょうか……。[32歳・広告代理店]

憎むだけでは何も変わらない。野心を抱いて相手に近づき、負け犬から脱出しましょ!

以前、マツコ(・デラックス)の番組に出たとき、若いディレクターと話していたら、マツコが横から「そいつ縁故入社よっ!」って言ってきたの。言いにくいことを本人の前でスカッと笑いにしながら、親睦も深める。マツコの魅力よね。だけど一社員の立場では、上手に笑いの材料にすることもできず、陰で不満をくすぶらせることになるのね。

不条理ではあるけど、「そんなのおかしい!」と異を唱えたところで、簡単にその仕組みが覆ることはない。コネ社員は、企業や組織にとってはお金を生み出す武器のひとつ。彼らの親パワーも才能のうちと割り切って利用するしかないのよね。

ブルボンヌ●女装パフォーマー、エッセイスト。新宿2丁目で「Campy! bar」をプロデュース。「オンナnoミカタ」(NHK第1ラジオ)メインパーソナリティー、「100分de名著」(NHK Eテレ)などに出演。

あなたの相談文には、「こいつのせいで自分が……」って憎しみがにじみ出てるけど、彼女があなたに対して上から目線な態度をとったわけじゃないんでしょ。どこまでも伸び伸びしてるお嬢さまだってだけで、そこまで憎む必要があるかしら。

あなたがイライラしているとき、当のお嬢さまは、ゴスペルで人類への愛を高らかに歌ってる。このままだと、彼女との差が開く一方よ。

あなたは今、「イヤだイヤだ」と言いながら、汚れたものを頑なに見続けている。それって、自分で自分を「呪い部屋」に閉じ込めてるようなもの。少女漫画でいったら、主人公にもライバルにもなれず、端のほうで小さく顔が出るだけの存在。自分を脇役にキャラ付けするなんて、もったいないじゃない。

そのネガティブな感情を使って、前に踏み出しましょうよ。自分の生まれを呪ったり、彼女を憎んでも何も変わらないけど、悔しさを燃料にして戦えば、「負け犬」状態からは抜け出せると思うの。

たとえば、彼女と一緒にゴスペルを習ってみるとかね。親しげに近づいていって、彼女の人脈を利用してやるの。おいしい思いをした後で、「友達ごっこはもう終わりよ!」って高らかに笑って裏切る――そんな恐ろしい結末を用意するのもいいかもしれないわね。

だけどコネ社員だって、自覚はあると思うのよ。アタシの周りにも、2世だの七光だの言われてしまう友人たちはいるけど、みんな嫉妬や「できて当たり前」と思われる厳しい目線にも当然気づいてる。コネが「ある」彼らにも、「ない」あなたとは違うしんどさはあるのよね。

相手に近づくことで意外な一面に触れて、「やたら目の敵にしていた私がバカだったな」となるかもしれないわよ。

構成=中津川詔子 撮影=加藤梢