お財布事情、貯蓄事情

フランス人は節約家のイメージがあるが、本当にケチなのだろうか。お金に対する価値観は日本とどう違うか。また家計管理の方法は? 貯蓄はする? ローンの組み方は?

1. 貯蓄の理由はバカンスと住宅購入

目の前に買いたい物件があろうがなかろうが、働いて少し余裕ができると「エパーニュロジュモン(住宅貯蓄)」を始めるのがフランス人の常識。「借りる本人の職業や預金の額などに一切関係なく、エパーニュロジュモンをいかに地道に続けてきたか、その銀行と長く付き合ってきたかが、住宅融資の際最も評価される」からだ。

「自分の家を持つために貯蓄するほうが、将来が不安だからという理由で貯蓄するより、ずっと楽しくなるでしょう」

これと並行して最大のイベント、夏のバカンスのための積み立ても一般的。バカンスのために働く、というのがフランス人の「勤労意欲」を支えているともいえる。

イラスト=ヨーコチーノ

とはいえ多くの日本人のように、飛行機に乗って、高級リゾートや海外の観光地で散財するような旅行はめったにしない。

旅行費用を全く使わないわけではないが、日本人の感覚とは「1桁違う」といえる。

フランス人はとにかくガイドブック片手に滞在先でよく歩き、自転車を使うことも多い。また、出身地近くの未知の町や、地方の地味な町を行き先に選び、知人の誰かが持っている別荘を借りて、旅行費を安く上げる工夫も欠かさないようだ。

2. 家計簿をつけなくても家計管理ができるのはなぜ?

欧州はカード社会だ。フランスもそう。カルトブルー(CB)という主要金融機関を網羅したデビットカード(クレジット機能付きもあり)を誰でも持っており、1ユーロの買い物にもこのカードを使う。

「自動的に何にいくら使ったかの明細が手に入るので、家計簿をつける必要がないのです」

家計管理という点では、社会環境がお金を使わせないようにできている。例えば、フランスの小売店は基本的に日曜休業で、平日の夜は20時で閉店する店が多い。近年は、休日や遅い時間に営業するコンビニのような店が都市部で少し出てきたとはいえ、日本のように24時間営業のコンビニが普及しているわけではない。しかしそれが当たり前なので、日本人もかつて普通にやっていた「残りもので一食つくり、いまある食品を使い切る」という習慣がフランス人にとっては普通のことなのだ。

コンビニの便利さは割高であることと引き換えだ。「しかも売れ筋の商品が並び、購買欲をあおられ、無駄なものをつい買ってしまう」。コンビニに頼り切りだと知らず知らずお金を使う生活になってしまう。

家計簿うんぬんより、不便さゆえに最初から無駄が出ない生活ともいえるだろう。