倹約家、オシャレ、情熱的に人を愛する……。日本人がフランス人に持っているイメージの実情はいかに? 日本と比べて際立って違う9つのことを現地レポート!

「ふらんすへ行きたしと思へどもふらんすはあまりに遠し」と大正、昭和時代の詩人、萩原朔太郎がつづったように、フランスは特に文化面で、昔から憧れの対象だった。しかし、日仏両方の価値観の違いを観察し続けてきたエッセイスト、吉村葉子さんは「今や日本人とフランス人の立ち位置は完全に対等なものになった」という。一方的に憧れるのではなく、それぞれの特徴を知ったうえで、フランスに学ぶべきところは自分たちも取り入れるという段階にあるのだ。とはいえ、両者にはいろいろな面で決定的な違いがある。

イラスト=ヨーコチーノ

まず、フランスは歴史上異民族との戦いや宗教戦争に明け暮れた経験から、他人を容易に信じない、シビアな価値観が人々の間に深く根を下ろしている。

また、企業で出世するのはほとんどが「グランゼコール」というエリート校の出身者で、だれでも勤勉に働けば出世すると思っている人はいない。

そして公立なら大学まで授業料が無料であるため、貯蓄やお金の使い方にも違いが出てくる。

吉村さんはこうした根本的な違いを認識したうえで、フランス人の考え方を適宜参考にできれば、日本人女性はもっとすてきに快適に暮らせるのでは、と話す。それは「自らの価値観にしたがって生きていくこと」だ。吉村さんに具体例を紹介してもらおう。

お財布事情、貯蓄事情

フランス人は節約家のイメージがあるが、本当にケチなのだろうか。お金に対する価値観は日本とどう違うか。また家計管理の方法は? 貯蓄はする? ローンの組み方は?

1. 貯蓄の理由はバカンスと住宅購入

目の前に買いたい物件があろうがなかろうが、働いて少し余裕ができると「エパーニュロジュモン(住宅貯蓄)」を始めるのがフランス人の常識。「借りる本人の職業や預金の額などに一切関係なく、エパーニュロジュモンをいかに地道に続けてきたか、その銀行と長く付き合ってきたかが、住宅融資の際最も評価される」からだ。

「自分の家を持つために貯蓄するほうが、将来が不安だからという理由で貯蓄するより、ずっと楽しくなるでしょう」

これと並行して最大のイベント、夏のバカンスのための積み立ても一般的。バカンスのために働く、というのがフランス人の「勤労意欲」を支えているともいえる。

イラスト=ヨーコチーノ

とはいえ多くの日本人のように、飛行機に乗って、高級リゾートや海外の観光地で散財するような旅行はめったにしない。

旅行費用を全く使わないわけではないが、日本人の感覚とは「1桁違う」といえる。

フランス人はとにかくガイドブック片手に滞在先でよく歩き、自転車を使うことも多い。また、出身地近くの未知の町や、地方の地味な町を行き先に選び、知人の誰かが持っている別荘を借りて、旅行費を安く上げる工夫も欠かさないようだ。

2. 家計簿をつけなくても家計管理ができるのはなぜ?

欧州はカード社会だ。フランスもそう。カルトブルー(CB)という主要金融機関を網羅したデビットカード(クレジット機能付きもあり)を誰でも持っており、1ユーロの買い物にもこのカードを使う。

「自動的に何にいくら使ったかの明細が手に入るので、家計簿をつける必要がないのです」

家計管理という点では、社会環境がお金を使わせないようにできている。例えば、フランスの小売店は基本的に日曜休業で、平日の夜は20時で閉店する店が多い。近年は、休日や遅い時間に営業するコンビニのような店が都市部で少し出てきたとはいえ、日本のように24時間営業のコンビニが普及しているわけではない。しかしそれが当たり前なので、日本人もかつて普通にやっていた「残りもので一食つくり、いまある食品を使い切る」という習慣がフランス人にとっては普通のことなのだ。

コンビニの便利さは割高であることと引き換えだ。「しかも売れ筋の商品が並び、購買欲をあおられ、無駄なものをつい買ってしまう」。コンビニに頼り切りだと知らず知らずお金を使う生活になってしまう。

家計簿うんぬんより、不便さゆえに最初から無駄が出ない生活ともいえるだろう。

3. 普通に過ごせば悠々自適な老後が待っている?

フランス人は人生を3分割して設計しているという。

幼年期から大学までが第1段階。伴侶を求めたり、子どもを持って家族をつくるのが第2段階。第3段階は、定年後の生活だ。

第3段階では、都市に住んでいる人は家を売って、「南仏のような暖房費のかからない地方の低額住居を購入して、悠々自適の老後を送る」というのが典型的なパターンのようだ。

しかし、その豊かな定年後につながる第1段階、第2段階において、フランスでは基本的に学費が無料であることの影響はあまりにも大きい。

また、「18歳になればアルバイトをして経済的に親から自立し、親のすねはかじらない習慣」があり、就職するまで親が子どもを養うことの多い日本の一般的な家庭の支出のあり方とも様相が決定的に異なる。

先に見たように、エパーニュロジュモンを続けていれば、日本よりも住宅ローンを組むのはたやすいこともあり、若いうちから住宅購入にお金をまわすことが可能だ。

むろん外食はあまりしない、極力ものを買わないなど、お金を使わない生活が身についていることも、老後の優雅な暮らしにつながっていることは言うまでもない。

吉村葉子
神奈川県生まれ。立教大学経済学部卒業。生活文化研究家。20年間のパリ滞在経験を通じ、フランスおよびヨーロッパ全域を対象に取材、執筆を続ける。近著に『人生後半をもっと愉しむ フランス仕込みの暮らし術』(家の光協会)。