投資を考える日本人がいま、なすべきこと
【平井】日本の投資家は、欧米の投資家よりも未熟あるいは保守的だと指摘されることもありますが、ロジャーズさんはどう思われますか。
【ロジャーズ】日本人に限らず、すべての投資家は未熟な面を持っている。例えば米国では株式投資が盛んだが、それは株式取引の歴史が古く、広く普及しているから。そこで利益を上げている人は必ずしも多くないよ。
【平井】これから預貯金、保険以外へ投資をしようと考える日本人へのアドバイスをお願いできますか。世代によって、投資マインドも、やるべきことも異なる部分があるとは思いますが。
【ロジャーズ】若い日本人は、日本を離れることも検討すべきかもしれない。もちろん日本はとてもいい国だし、私自身も大好きだ。人、食べ物、効率性、女性(笑)……。数え上げたら切りがない。でも少子化は止まらず、国の借金は増え続けている。年齢や仕事、家族の事情で日本から出られないのであれば、どうにかして資産を守らなければならない。そう考えたときに、現物資産が有望な選択肢になる。特に金や銀への投資は有効だろう。日本で、そして世界で紙幣のバラマキ政策が取られているいま、現物資産を持つ意味は大きい。
【平井】世界的な通貨安政策によって通貨の信頼性が低下しているように思います。今後、紙幣以外の決済手段の存在感が高まるのではないでしょうか。
【ロジャーズ】何かしら紙幣に代わるものが台頭してくるだろうね、それは金かもしれないし銀かもしれない。かつては牛や貝殻が使われたこともあった。いまの時代はコンピューターのネットワークがあるからビットコインなどの暗号通貨がより広範囲に使われることも考えられる。いずれにせよ、いまの通貨制度がこのまま維持される可能性は低いだろうね。
オンラインでの金取引への支持も高まっています
平井政光(ひらい・まさみつ)
Bullion Japan株式会社 CEO。北海道出身。法政大学卒業。金融商品企画コンサルティングに従事したのち、2009年、BSインベストメントアドバイザリー株式会社(マレーシア資本の投資助言会社)CEO、日本株インデックスファンド運用責任者として勤務し、Bullion Japanマーケティング担当副社長を経て2016年より現職。
着実に支持を広げるオンラインでの金取引
【平井】Brexitや米国大統領候補のTPP不支持などが話題になっていて、世界がアンチグローバル化しつつあるようにも感じます。これは経済情勢や金融市場にどんな影響を与えると考えられるでしょうか。
【ロジャーズ】歴史上、景気などが悪くなると、多くの場合、人はそれを外国人や異教徒のせいにしてきた。いまも世界中でそうした動きを感じるね。これまでの歴史を振り返ってみれば、オープンマーケットは世界経済の発展に貢献してきたはず。でも景気低迷が続くと、逆向きになるんだ。そこで金をはじめ現物資産への注目度が高まるわけだけど、ブリオンボールト・サービスの提供をいつから日本で始めたの?
【平井】2013年から準備をして、昨年、日本で本格的に事業をスタートしました。
【ロジャーズ】金現物のオンライン取引というのはなかなか素晴らしいアイディアだ。日本で誰もやらなかったのが不思議だよ。日本の投資家にとっても、Bullion Japanにとってもスマートな選択だね。
【平井】ありがとうございます。おかげさまで、お客様からの支持も着実に高まっています。
【ロジャーズ】ところでブリオンボールト・サービスの円建て市場の金も保管はチューリッヒでしているようだけど、日本で保管しない理由はあるのかい。
【平井】日本は良くも悪くも国外に資産を置く考えが浸透していません。そこで現物資産を海外で保管する手法をまず知っていただこうと考えています。将来的には投資家の皆様のニーズに合わせて、保管場所を日本か海外か、選べる状況が好ましいと思っています。
【ロジャーズ】いずれは国外の投資家から日本での金の保管ニーズが出てくるかもしれないね。
【平井】確かにそうですね。今日は貴重なお話をありがとうございました。
【ロジャーズ】こちらこそ。富士山に2回登ったこと以外、平井さんはとてもスマートだったよ(笑)。