先行きの見通しがつきにくい今、希望のライフプランを叶えるのに必要な資金をどう確保すればいいのか――。顧客視点のアドバイスで支持を集めるファイナンシャル・プランナー(CFP(R))の佐藤益弘氏に聞いた。

お金や不動産などに働いてもらう

――国内はマイナス金利で、資産運用を取り巻く環境も変化しています。一方、海外は英国のEU離脱や米国の大統領選などで先行きを見通すのが難しい状況です。中長期視点で資産運用を考える場合、どのような点に注意すればいいでしょうか。

【佐藤】日本は長い間、ある面で国や会社が個人を守ってくれる時代が続いていたため、自ら資産運用をする必要がそれほどありませんでした。しかし、公的年金は当てにできず、退職金も自分の判断で運用しなければならないのが今の時代。必要なお金は、自助努力で準備しなくてはなりません。

とはいえ、自分で働いて得る収入を簡単に増やすことはできません。そこで、お金や不動産などに働いてもらい、収入を得ることが求められるようになってきているのです。

――実際に投資などを行うにあたって、どのような視点、基準を持つといいでしょうか。

【佐藤】「外部環境≒世の中の動き」と「内部環境≒自分のライフプラン」がモノサシになるでしょう。短期的には不透明な外部環境の動きも、中長期的にみると、ある程度予測がつきます。今、世界の人口は増加の一途をたどっており、高齢化は世界共通の課題。一方で、AI(人工知能)やロボットなどに代替される仕事は増えていくでしょう。そう考えると、やはり“自分”という資産を働かせて安定収入を得るのはだんだん難しくなってくる。その現象はすでに格差という形で顕在化しつつあります。

このような世の中の動きに右往左往しないためにも、「内部環境≒自分のライフプラン」という軸をしっかり持つことがいっそう大事な世の中になっています。投資計画を立てる際にもその視点を忘れてはいけません。

――ライフプランを考える上で、押さえておきたいポイントはありますか。

【佐藤】一つには、“時間単価”という発想を持つといいでしょう。例えば、「マイホーム購入と一生賃貸とどちらが得か?」という質問をよく受けます。仮に3000万円で購入したマイホームに30年間住むとしましょう。30年後に1000万円で売却できるとすると、1年当たりの単価は約67万円になります。ごく単純な例ですが、年間の家賃がこれよりも高ければ、マイホームを購入したほうが得といえます。

――希望のライフプランを実現するには、ある程度積極的な投資も必要なように思いますが、依然として「危険」「恐い」というイメージを持っている人も少なくありません。

【佐藤】確かに投資は、常に経済的な利益を享受できるものではありません。場合によっては、損失を被ることもあります。それを「失敗」と考えて、投資することを躊躇(ちゅうちょ)する方が多いのです。

しかし、行動しなければ「成功」もあり得ません。さらに大事なのは、「時間には限りがある」ということです。何も行動しないまま、10年間経過してしまえば、当然ながらその時間は取り戻すことができません。

決断のために必要な情報を適切なタイミングで提供してくれるのがいいパートナー

佐藤益弘(さとう・よしひろ)


株式会社優益FPオフィス
ファイナンシャル・プランナー(CFP(R))
日本大学法学部卒業後、メーカーの不動産部門にてマンションの開発、販売統括、管理支援などを務めながら、FP資格を取得。2000年8月より独立系FPとして独立。法政大学、産業能率大学の兼任講師も務める。