今年2月に第1号の投資信託商品の運用を始めたりそなアセットマネジメント。企業姿勢、運用のノウハウなどを、同社の西山社長とモーニングスターの朝倉社長が語り合った。
資産運用の必要性をお客さまに広めるために
【朝倉】昨年8月に、りそなアセットマネジメントが設立された背景には、資産運用の必要性をもっと広めたいという思いがあったそうですね。
【西山】その通りです。りそな銀行のお客さまで見ると、投資信託のご利用がある方はわずか数%程度。残りの大半の方にも資産運用の必要性をご理解いただきたいと考えています。
資産運用の必要性をお客さまにご説明する際、キーワードが二つあります。一つ目は長寿化です。厚生労働省が発表している平成27年の簡易生命表によれば、いま90歳まで長生きする確率は、男性が25%、女性が49%。つまり男性でも四人に一人が、女性は二人に一人が90歳まで長生きすることになります。二つ目はインフレです。なかなか実感を持ちにくいですが、日銀は物価上昇率2%を目標に掲げており、長い目で見れば、インフレにも備えておく必要があります。
【朝倉】それに年金への不安も大きいですね。年金の受給開始年齢が、いま65歳へ移行中ですが、それをさらに遅らせることも検討されています。加えて預金金利は低く、給料は上がらない。物価が上昇すれば、手持ちの資産は目減りしてしまいます。資産防衛という視点でお金を運用していきませんとね。ただ、初心者の方がいきなり株式投資などを始めるのは難しいでしょう。やはり資産運用の手段としては、投資信託が優れていますね。
【西山】投資信託は1万円程度から利用できるのが大きなメリット。しかも、分散投資ができます。もし、ご自身で国際分散投資をしようと思えば、少なくとも数百万円程度の資金が必要です。
【朝倉】資産運用では国際分散投資は欠かせませんが、個人ではなかなか情報が入手できません。言葉の問題もあります。ところが投資信託という器を使えば、低コストで簡単に国際分散投資が可能です。ただ、投資信託はプロを信じて運用を託す商品ですから、有能なプロを選ぶことが必要。その点、りそなグループには年金運用の長い実績がありますからね。
半世紀以上の年金運用で培ったノウハウを活用
【西山】当社はりそなグループの運用会社として発足しました。りそな銀行の母体の一つ、旧大和銀行は信託を併営しており、グループには50年以上にわたって、企業年金や公的年金を運用してきた実績があります。当社が今年2月に運用を開始した投資信託商品の「りそなラップ型ファンド(愛称・R246)」には、そこで培ったノウハウが惜しみなく使われています。
【朝倉】その愛称に目標リターンを使うわかりやすい投資信託ですね。
【西山】ええ、「安定型」「安定成長型」「成長型」の三種類ですが、投資の初心者のお客さまにも受け入れていただきやすいよう、価格下落リスクをできるだけ抑えるようにファンド設計を工夫しています。それも、半世紀以上の期間に蓄積された膨大なデータを分析した成果です。
【朝倉】過去のビッグデータを持っている点は、新たに設立された普通の運用会社とはやはり違いますね。
【西山】最近は銀行においても、お客さまのライフプランの提案を行っていると聞きますが、そういった提案にも大変マッチした投資信託であると言えると思います。運用手段としてご利用いただく投資信託にも、リターンの目安が必要になるため、社内で厳しい議論の末に決まった愛称なのです。
【朝倉】販売のしかたとセットだからこそのネーミングだったのですね。それは、りそなグループの広い顧客基盤、優秀な社員あってこそのことでしょうし、グループ内で運用から販売まで完結しているのも、利用者にとっては安心ですね。
【西山】運用の世界には「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」という言葉があります。最近では新聞でも見かけるようになりましたが、私どもでは数十年前から強く意識し続けている言葉です。りそなグループは昨年、「お客さまの喜びが、『りそな』の喜び」で始まる「りそなブランド宣言」を制定しました。真にお客さまのためとなる質の高い金融サービスを提供することで、お客さまの信頼に応えます。
【朝倉】運用会社に必要な「受託者責任」が理念として根づいており、それは社会的なコミットメントと同じですね。
【西山】そうしたことを、グループとして広くお伝えすべく今年11月に東京、大阪でモーニングスターさんにご協力いただいて大規模なセミナーを開きます。当社が開催する大規模なセミナーは創立以来、初のこと。これから投資を始めようと考えているお客さまにもご理解していただけるような内容のものにしたいと考えています。
【朝倉】われわれも期待しています。投資信託を評価するだけでなく、良質の投資信託の存在を広く世の中に伝えることも、当社の責務ですから。