円建ての個人向け金売買サービスを提供するBullion Japanの平井政光CEOと世界的投資家のジム・ロジャーズ氏が、資産運用のいまとこれからについて語り合った。

世界の通貨安競争で高まる現物資産への関心

【ロジャーズ】今日は日本からのお客様だから、富士山をモチーフにしたネクタイを選んだよ。平井さんは富士山に登ったことはあるかい?

【平井】2回登りました。

【ロジャーズ】2回も……(笑)。僕も一度は登ってみたいね。ところで、平井さんの金を取り扱うBullion Japanという会社は、どのようなサービスを提供しているんですか?

【平井】当社は、2005年に英国でスタートした“ブリオンボールト・サービス”の日本における正規独占媒介代理店で、オンラインでの金現物の小口取引サービスを提供しています。ロジャーズさんは、かねてから金への投資にも注目されていますね。このところ日本ではアベノミクスの終焉が叫ばれ、世界では新興国の後退やBrexit(英国のEU離脱)などがあり、金への関心が高まっています。

【ロジャーズ】世界の多くの国の政府が自国通貨安を目指す中、金現物の取引はなかなか興味深い。「保険」としての機能を果たすと思うよ。私自身、金の相場が下落したら、もっと買い増すつもりだね。

【平井】長期保有と短期売買とどちらがメーンですか。

【ロジャーズ】これまで購入した金は、一度も売却したことがないんだ。一部の投資家は売買で多額の利益を上げているけれど、私はいずれ子どもに譲ろうと思っているから。ただ、最近の通貨安政策の流れを見ていると、金のバブル相場が来るかもしれない。そうなったら売却の可能性もあるね。

【平井】私たちのお客様も、売却より購入のほうが明らかに多いですね。ロジャーズさんは、欧州、米国、日本の通貨安政策に批判的な立場だと思います。だからこそ金投資なのだと思いますが、Brexitで浮き彫りになったのは米ドルや日本円がやはり安全資産として認識されているということでした。

【ロジャーズ】確かに日本円や米ドルには安全資産としてのイメージがあり、実際に世界的な経済危機の局面においては買われることが多い。ただ問題は、日本も米国も財政破たんをしかねないほどの借金を抱えていることだ。私も米ドルを保有はしているけど、それほど信頼を寄せていない。資産を守りたい人は、やはり相応の金をはじめとする現物資産を持っておくべきだろうね。

金の相場が下落したら私はもっと買い増すだろう

ジム・ロジャーズ


アメリカ合衆国アラバマ州出身の投資家。イェール大学(学士)およびオックスフォード大学(修士)卒。クォンタム・ファンドの共同設立者(Co-Founder)。共同設立者には、ジョージ・ソロスもいた。現在はRogers Holdingsの会長。2002年よりシンガポール在住。ジョージ・ソロス、ウォーレン・バフェット氏と共に世界三大投資家とされる。