男も女も、人は役割を与えられると育つ
幼い子どもたちを抱えた一家の母ががんに倒れたというニュースに、家族の辛さを思うと心が苦しくなる。だが少なくとも報道される範囲では、子どもたちが家族に囲まれて幸せそうに育ち、お目見得なる大舞台も果たしていく。
大小の山をいくつも越え、妻の病状を伝える会見で見た、海老蔵さんのくっきりとした視線、明瞭で揺らぎのない口調、軸の定まった姿勢に、「あぁ、人は役割を与えられると、こんなにも成長するのだ」と驚きがあった。父として、夫として、職業人としての役割と責任。夜ごと酒を飲んで六本木や西麻布界隈でフラフラ騒いでいるようなトシじゃない。海老蔵さんは38歳、姉の小林麻耶さんは36歳、妹の麻央さんは33歳だ。芸能メディアを騒がせていた彼らはもう、そんな年齢になったのか。
5月中旬に過労で緊急搬送され、長期休養が発表されていた姉の小林麻耶さんも、最も大きな原因は妹の闘病を支える生活の心労だという。今年初めには『ブリカマぶるーす』なる曲でCDデビューし、2月のテレビ朝日『しくじり先生』で「度重なる転校生活で培った八方美人の性格で嫌われた」と告白した頃、番組中に突然涙ぐむことが多発し、パニック障害ではないかと噂されていたらしい。他にも、“子宮系スピリチュアル”なる活動への傾倒や、結婚恐怖症による不安定など、「痛い、イタい」と言われ放題だった。こうして「イタい」キャラクターを被って世間の視線を自分へ向け矢面に立つ、その背は妹一家をかばっていたのだろうか。彼女は、人の期待に添おうと努力し、どこまでも責任感が強い、姉ならではのメンタルを持った女性なのだと痛感させられる。
小林麻央さんの、梨園の妻として表舞台を退いた選択にも、感じるものがある。麻央さんもまた、さまざまな葛藤や取捨選択を経て、一つの役割を全うする道を選んでいたのだ。みんな、何て真面目に、一生懸命に生きているんだろう。大人になるとは、「言い訳を封じて堂々と選び取っていく作業」なのかもしれない、と思う。そして、いま30代や40代で様々な人生の岐路に立っている私たちも、それは同じだ。