日本文化の本【中級】
-日本の心と形を禅、茶、春画、美から学ぶ
『歩々清風 科学する茶禅の人』堀内宗心(禅文化研究所)
著者は表千家流堀内家12代。茶道は武士が人間らしくなるために学んだ禅宗から生まれた。「茶を習う」とは、自他の境を無くし自己を万物の中に融合同化させる方便であり、本書はそれをわかりやすい言葉で学べる。
『日本その心とかたち(ジブリLibrary)』加藤周一(徳間書店)
深い洞察力を持つ評論家・加藤周一が縄文時代から現代のアニメーションまでを取り上げ、日本文化を美術史からひもとく。常識や定説をくつがえす鋭い分析と西洋文化との比較を通じて、私たちの美の意識が察知される。
『春画の楽しみ方 完全ガイド』白倉敬彦(池田書店)
かつて嫁入り道具として母から持たされることもあった春画。あらためて向き合うと、女性としての夜のたしなみは興味深い。掲載された作品の完成度も高く、いわゆる浮世絵を知るときの良書でもある。
日本文化の本【上級】
-ゆかしく、繰り返し、身に染み入るように
『折口信夫 古典詩歌論集』折口信夫(岩波文庫)
近代以前、日本の文学といえば和歌であり、連歌であった。いわば、日本文化の根本であるのだから、わかってもわからなくても、呪文のように唱えるべきである、と私は思っている。
『坂部恵集4〈しるし〉〈かたりふるまい〉』坂部 恵(岩波書店)
哲学者・坂部恵の評論集。人間の「ふるまい」や「ふり」という日常的な動作を取り上げ、行動する側と受け手の二重構造や西洋との違いを比較することで日本文化を論じている。奥行きのある詩的な文体が心地よい。
『英文収録 日本の覚醒』岡倉天心(講談社学術文庫)
日露戦争当時、英文で書かれ、米国で出版された本の翻訳版。日本美術に生涯をささげた岡倉天心による日本の思想や文化の独自性を述べた著書は、新たなグローバル化を迫られている現代、十分に新しく、学ぶ点が多い。
新橋演舞場の企画室長を経て、2006年に処女作『芸者論』で第20回和辻哲郎文化賞受賞。エッセイ等でも活躍。趣味として宮薗節・千之流の浄瑠璃も皆伝。國學院大學客員教授。
構成=角田奈穂子 撮影=田中真光