世にはびこる「40歳を過ぎたら絶望的」という説は正しいのか。人口動態のデータから不妊治療の実績に関するものまで、さまざまなデータで検証していきます。

「40歳で7%しか出産できない」は誤解

【誤解1】報道でよく使われる「40歳の出産率は7%」のデータは、不妊治療をしている患者さんのデータ(グラフ1参照)
【誤解2】でも、40歳以上で出産する女性の9割が自然妊娠による出産(グラフ2参照)

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【左】グラフ1:不妊治療における年齢と生産分娩率【右】グラフ2:40歳以上の出産4万人の内訳

●老化はそこまで早くない

40歳では出産が難しいという場合、おおかたその根拠は、不妊治療のデータをもとにしています。たとえば、「40歳で7%しか出産できない」という数字。報道でもよく使われますが、これは、人工授精1回当たりの出産に至る確率(グラフ1)です。そこには3つの誤解が含まれています。

(1)人工授精は何回もトライできること。複数回行えば確率は上がります。

(2)40歳で不妊治療をしている人は、通常より重度な患者が多いこと。30代で治療を始めた場合、症状が軽い人たちは、早い段階で妊娠し、治療を終えていきます。そのため、40歳で残る人たちは、症状が重い人の割合が高くなっているのです。

(3)これらの数字はすべて、不妊治療に関するものであること。治療をせずに出産した人のことは含まれていません。そして、実は40歳を超えて出産している人は、自然妊娠のほうが圧倒的に多いのです。現在日本では、年間約4万人の人が40代で出産しています。そのうち、不妊治療患者は3600人。9割以上は自然妊娠なのです。

確かに、女性の体は年をとると、子どもを産みづらくなっていくのは事実です。しかし、それは、40歳で絶望的というほど早くはありません。そのような状態になるのは、45歳を過ぎてから、というのが現実でしょう。

イラスト=Takayo Akiyama